Short Story | ナノ


▼ デストロイヤー



太陽は登りきり、あとは沈むだけだと傾き始めて少しした頃のこと。

2-3の教室では、現代文の授業が行われていた。

今日、火曜日の時間割はクラスでは不服の声が多く聞こえてくる。

特に現在行われている、現代文。

お昼休み後の、これだ。


シャーペンを片手に頬杖を付きながら先生が書いていく黒板をボーッと眺める。

チラッと視界に入る、窓際に座る金髪の男子。



研磨…ちゃんと受けてる…。



黒板に書かれたことをノートに写す姿を見て、思う。



部活の時とまた違う姿で、毎回忘れる。

彼がうち(音駒高校)のバレー部の軸であるということを…。


部活では、マネージャー視点。
教室に入れば、クラスメイト視点だ。


何故だろう…部活ではとてつもなくカッコよく見える彼だ。

教室に入れば、ゲームが好きな高校生。


部活では…司令塔として必要不可欠な存在なのに…
存在感が大きいな。



ボーッと彼の動きを見ていたら、フワッと欠伸をした。
そして、視線がこちらを向いた。

ビックリして、とりあえず少し微笑んでおいた。
彼は眉間に少し皺を寄せて、ゆっくり前に向き直った。



はぁ…びっくりした…何で気づいたんだろう。



1日の授業を終え、部活動が一斉に始まる。


体育館に入ると、ボールを持った研磨がいた。


真っ黒なTシャツに、真っ赤な短パン…何ら変わりないバレー部での彼の姿である。



「名前、現代文の時、何で見てたの?」



「研磨眠たくないのかなぁ?と思って…見たら真面目に授業受けてるからビックリしたよ。」



そう言うと研磨は「名前よりは真面目に受けてるよ?」と言い返してきた。


「たしかに。」と笑って返すと、研磨の口角が上がった。




「よく、見てるからね、俺。」




「…へ?」



今、研磨、なんて言った?



「特に名前は、バレないから面白い。」



「ビックリして起きて先生を確認してる時とか…」といつも誰にも見られていないことを確認していたハズの姿を研磨に見られていたと知り恥ずかしくなる。


俯いて「恥ずかしいから言わないでくれるかなぁ?」と言うと



「…名前、可愛いから見たくなるんだよ。」



「え?」



『おい、こら研磨ー!!公共の場でいちゃつくな!そしてサボるな!』



「…えー…いちゃついてないし…サボってもいない。」



主将の黒尾先輩に大きな声で注意されたが、彼はだるそうに小さい声で言い返す。


もちろん、その声は先輩に届くわけなく、手にしていたボールを私に渡した。



「みんなにトス上げるから、手伝って。」



「あ、うん。」



「…さっきのこと、クロたちには秘密。」




「うるさいから。」と付け足し、ネット前まで駆けていった。

その背を見ながら思った。



人の気もしらないで…破壊力すごい。
デストロイヤー…。


…私も見てるよってこと、言えばよかったのかな?


ストロイヤー
一発で100のダメージ

-END-

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