▼ 大好きだけど大嫌いと偽る心
本当は、好き。
すごい、好き。
「あっバカッ!マネージャーにはかけるなよ!」
猛暑日に、プールの使用が許可されたバレー部一同はプールで遊んでいた。
マネージャーは入ることができず、ベンチでそんな部員たちを見守る。
プールサイドが日に焼けて素足では火傷するのではないかというほどに熱くなっていて、山本とリエーフがホースで水をかけていたところ…
なぜか水遊びになった二人。
その近くにいたのはマネージャーの名前で、よく見ている黒尾がプールからあがり彼女の前に立ちあだかった。
「お前らなぁ、目の前にこんなに巨大な水たまりがあるってのになんでそんなちっぽけな水でそれもせっめぇとこで遊ぶんだ。」
徐々に黒尾の声がドスを帯びていく。
研磨はプールの端で「水たまりじゃないよ。」と突っ込んでいる。
「うるせ。」
「…。」
一喝された研磨はぶくぶくと水の中に沈む。
怒られた本人たちは、さも黒尾の独り言だったかのように再び少し離れた場所で水遊びを再開。
黒尾が振り返った。
「濡れてねぇな。」
「…う、うん。」
「くっそ、アイツら、もうちょっとしたらプールに放り込む。」と名前の隣に腰かけた黒尾。
彼が動くたびに滴が散ってくる。
「ちょっと、動かないでよ。」
「あ?動くなって無茶な。」
「そうだけど…」
怪訝そうに言う名前に黒尾が顔を覗き込んだ。
あまりの近さにまさか!と思った彼女は身を離す。
「なっ…何しようとしたの!」
「え?見ただけだけど…」
「うそ!」
キスしようとした!と言おうとして、やめた名前。
時すでに遅しだった。
黒尾は察しがいい。
二ヤッとお得意の不敵な笑みを浮かべると名前に「へぇ〜。期待しちゃった?名前ちゃん。」と彼女をいじめはじめる。
正直に頬を染めて首を横に振る彼女には、嘘つきもいいところだ。
相変わらずニヤニヤして「かぁわい。」といじる黒尾をキッと睨むなり
「嫌い!」と口から出る。
慣れている彼はいつものことだと「はいはい。そうやって逃げんだろ?」と彼女の手首を掴むと引き寄せた。
ちょ、誰かに見られたら!!
必死に抵抗する間もなく、黒尾が耳元へ口を寄せた。
「実はすっげぇ好きなこと知ってるぞ。」
にやにやと黒尾が不敵な笑みで名前を見る。
彼女はフイッと顔を横へ向けた。
「大嫌い。」
「はいはい。」
「あー!!!」
山本の叫び声に身をパッと離した二人。
部員全員がプールサイドに立つ山本を見る。
「リエーフー!!!」
「いや、それアメンボです猛虎さん!俺ここいますから!」
と相変わらずバカな二人に、名前は笑った。
大好きだけど大嫌いと偽る心
ツンデレ彼女を持った宿命
-END-