▼ 君のとなりには誰がいた
昼休み、黒尾がいない席の前で窓の外をぼーっと見つめている名前の姿があった。
夜久はそれに気づき、前の席に腰掛けると彼女の頬を一筋の涙が伝っていくのを見た。
え…。
目を見開いた。
視線の先は、飛行機雲を引いていく飛行機。
まさか、飛行機見て泣いてんじゃ…ねぇよな。
と様子を伺う。
「夜久…」
「ん?」
ぼそっと名前を呼ばれ、夜久は彼女をジッと見つめたまま次の言葉を待つ。
「見すぎ。」
「…だって、泣いてんだろ。」
「様子見くらいさせろよ。」と呟く。
「やめて…」
「なんで、黒尾も夜久もそうやって優しく言うの。」と堪えていた涙をポタポタと零す名前に、夜久は「振られたのか?」と問いかける。
それに涙を流しながら口角を上げた名前は「うん。」と返事をする。
夜久は「あのさ。」と口を開いた。
「ふられたって結果の後のこと考えてるか?」
「え?」
涙を流しそのまま放置している名前の頬に手を添えてその涙を拭う夜久は続ける。
「ふられたことにも、意味があんだよ。」
ジッと見つめてから、ニッと笑った夜久。
名前は夜久の言葉にどこか心がスッとした気がした。
「ふられたらふられたんだ。それは変えられねぇ。でもな、ふられたことに意味があるなら…たぶん、お前はこれから、ふったソイツなんかより幸せにしてくれる奴と恋すんだよ。」
「……夜久。」
名前は夜久の言葉に、涙を拭った。
「例えそれが誰だろうが、俺はお前の傍にいてやるよ。」
名前は、言うだけ言って去っていった夜久に呟いた。
「かっこいいこというなぁ…」
ずっと、こうして黒尾と夜久に陰で支えられてきたんだ。
「早く忘れよう。」
そして、私を幸せにしてくれる人に出会えるように可愛くなろう。
君のとなりには誰がいた
これからも傍にいてやる
-END-