▼ 叶わない恋をした
毎日、部活の日々を送っているバレー部1年の灰羽リエーフ。
日本離れした見た目とその長身を生かしたプレーがみな一目置いている。
しかし、リエーフが一目置いているのは、憧れのものとは違った感情。
研磨と親しく話すマネージャーの姿を見て、チクリと針が差すような痛みを覚える。
ボールを見つめるリエーフに犬岡が「リエーフ!サーブ!」と声を上げる。
リエーフはハッと我に返り、いつもの如くヘラッと笑うと「わりぃわりぃ!」とサーブを打つ。
しかし、そのボールは犬岡の方へは向かっていかず…
「え?!消えた?!」
「あれ?」
犬岡の言葉にその周りにいた部員たちがリエーフを見る。
リエーフはあたりをキョロキョロする。
その瞬間、ドッと体育館が笑い声に包まれた。
ボールは待ってましたと言わんばかりに、リエーフの頭上に直撃したのだ。
「ぶっ…」
「ある意味才能だなお前。」
リエーフ側のコートにいた3年の夜久と黒尾がひときわ腹を抱えて笑っている。
リエーフは笑われていることなんてどうでもよく、それより黒尾の言葉に目を輝かせた。
「天才?!」
「いや…才能だっつったんだよ。」
「間違えても天才なんて言わねぇよ。」と黒尾に冷たくあしらわれたリエーフは口をとがらせて「ちぇー」と元の位置に戻る。
視線を感じて、ベンチを見ると、マネージャーの名前の姿があった。
名前は優しく微笑み、「がんばれ。」と言っている。
リエーフはその応援の元「よっしゃぁー!」と気合を入れなおして、もう一度サーブにチャレンジ。
ボールを上げたとき肩を叩かれた。
「研磨さん!」
「リエーフ、力みすぎ。もっと肩の力抜いて。」
「で、ボールを手のひらで押し出すようにする。」とサーブの仕方を教える研磨。
「誰もはじめのうちは出来ないけど、慣れれば、それでちゃんと入るようになるから。」
「頑張って。」とそれだけ言ってボールを片付ける研磨の背を見て、リエーフは口角を挙げた。
「よし!犬岡ー!いくぞー!」
こうして、彼のサーブはまともな形になっていくのだった。
叶わない恋をした
俺の入る隙間なんてない
-END-