Short Story | ナノ


▼ 只今、喧嘩中

青空快晴の、真夏日。
夏休みに入った音駒高校。

しかし、バレー部は休みこそ練習時と言わんばかり部活漬けの日々を送っていた。

今日もそのうちの一日だと黒尾は普段通り体育館へ訪れたが…何かが違った。


「おいおい、どうした。」

「…別に。」


「どうもしないし。」と明らかに不機嫌な研磨に、黒尾は困った。


「なぜか研磨が不機嫌なんだが…」


黒尾が夜久と海を集めて言う。
夜久は「お前怒らせるようなことしたんじゃねぇの?」と眉を顰める。
黒尾は「いや、今日はそんなこと言ってねぇ。」と即答する。
海は「黒尾じゃなかったら…マネージャーじゃないのか。」と返す。

その場に、ピシャリと張り詰めた空気が通った気がした。
黒尾と夜久が顔を見合わせ「「それだわ。」」と口を揃えた。


「おはようございます。」

「おはざーっす!」


いつになく、小さい声で挨拶をした名前は欠伸をした。
リエーフは目の前を通った際に大きな声で挨拶をする。

その瞬間を、黒尾が捕まえた。


「ちょっといーか?」

「…あ、はい。」


黒尾の登場に、ピシッと背筋を伸ばした名前を遠くながら見ていた夜久と海が「大丈夫かな…」と心配した面持ちでいた。

体育館の端に呼ばれた名前は何を言われるのかと少しビクビクしながら黒尾の表情を伺う。

黒尾は腕を組んで「単刀直入に聞く。」と彼女に告げた。

当の本人は、「はいっ」と意を決したかのように目をぎゅっと瞑る。


「研磨と何かあったか?」

「…へ。」


黒尾の疑問に、拍子抜けした名前。
目をパチパチさせ黒尾を見上げた。


「研磨と喧嘩してるんだと。」


名前から訳を聞いた黒尾は彼女を開放した後、3年二人の元へ戻るなりそう伝えた。

夜久は「喧嘩?」と呆れた顔をした。


「名前が言うには夏休みに入ってから部活と課題に追われてて研磨のメッセージに気づかず…口論になった後…」


黒尾がため息をついた。


「研磨が“じゃあ、マネージャーやめれば。”って言ったんだと。」

「んん?その口論の内容がすんげぇ気になる。」

「どういう口論をしたらそうなるんだ…。」


夜久と海は頭を悩ませる。

黒尾は「いや、そっちじゃねぇだろ。今の問題は。」と二人を本題へ戻す。


「んー…なんにせよ、研磨がそれだけ名前のことを想ってるってことを本人は自覚しねぇといけねぇし…研磨は言い過ぎだってことに気づかねぇといけねぇ…」


まぁ、もう気づいてるだろうけどな。と研磨を見る黒尾。


「恋って…だるいな。」

「愛って…難しいな。」


夜久と海がため息をついた。


只今、嘩中
うちの背骨で、脳で、心臓が怒ると部活が揺れる

-END-

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