Short Story | ナノ


▼ 大好きなのに気づいてはくれない

元々、あまり喋らないし
喋ろうとも思わない。

それは、喋ることがないから。

まぁ、一番は他人と関わりたくない道をずっとこの先も歩んでいくんだと思ってたんだけど…
気になる人ができると、それは大きく外れた別ルートになってしまった。

できる限り、見たいと思うし、喋りたいな…なんて、柄にもない気持ちも出てくる。


毎日ある部活。
マネージャーが入るまでは、自分たちで行っていたことが、今はしなくてよくなった。
その分、彼女はあちらこちらを行ったり来たり忙しなく、目が勝手に追ってる。

たまに、視線が合うと…


「へへっ」

「…。」


笑顔を向けてくれる。
その時は、思わず視線を逸らしてしまうけど…

パタパタと動き出す彼女が視界に入ると、また目が追っている。


「研磨ートス!」

「…。」


たまに、クロの声も聞こえないことがあったりして…
気づいたら、目の前にクロがいて、嫌な顔をしてる。


「まぁた見てただろーお前。」

「…うるさい。」

「否定しないってことは図星だな。」


ボールを片手に、もう片手を腰にあてて上から俺を見下ろすクロは、腹が少し立つ。
なんでも見透かされてるみたいで、嫌だ。


「告れば?」

「しないし。放っといて。」


喋りながら山成りのボールを俺へ向けて投げるクロに、そのままトスを上げる。
綺麗に決まった。


「お前が他人に興味持つなんて…しかも女。」

「なんか、クロが言うと変に聞こえる。」


「なんだと、お前ー。」と言っている黒尾を背にすると、遠くの目の前でリエーフが「研磨さん!研磨さん!」と手を上げて主張している。


「…立ってるだけでもう十分目立ってるのに…どうしてあそこまでして目立ちたがるんだろ。」


呆れた研磨に黒尾が「アイツはある意味逸材だからなぁ。」とぼやく。
そんなリエーフの姿を見た名前が、バインダーを片手に研磨たちの方を見た。


「研磨ー!」

「え…」


隣にいたリエーフも、黒尾も、研磨ですらも彼女の行動に驚いた。
バインダーと手を大きく振る姿。


「…鈍感なことで…。」

「鈍感ってレベルじゃ…ないと思うけど…」


変人レベル。と思った。

でも、可愛いと思った研磨は、重症なようだ。


大好きなのにづいてはくれない
違う、気づかせないようにしてる


-END-

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