▼ 白の色鉛筆で書いた愛の言葉
中間テスト目前に迫った、その前日。
3年5組の教室で、夜久と名前は放課後残って一緒に勉強をしていた。
いや、一緒に勉強しているというよりも…
「だーかーらー。逆なんだよ。」
そう言って、赤色のボールペンを手にする夜久は名前の目の前で、英単語の下に下線を引いて矢印を書かれる。
「う…。」
「はい。もう一回やり直せ。」
夜久は勉強せず、ひたすら名前の勉強を見ていた。
目を離せば、まったく意味のわからない答えを書いて出してくるため、一秒たりとも書いている文字から目を離せないでいた。
逆に名前は、自業自得だと思っていても、彼氏、夜久に書いているところをジッと見られていてはテスト勉強どうのこうのの問題ではなかった。
もはや、心臓破裂寸前のところまで来ているのではないかと思うほどに胸は高鳴りの限界を迎えていた。
決して、わからず手を止めているわけではない名前だが、わからないと思ったのか夜久が持ったシャーペンで書きつつ教える。
名前は英単語を見るより、ジッと見つめるは夜久の指だった。
綺麗な指だな…。
そう思った瞬間だった。
夜久が手にしていた英語の教科書で名前の頭へ軽く衝撃が与えらえた。
「お前はどこを見てんだ。」
「へ…夜久の指…。」
「あほか。こっちを見るんだよ。」
シャーペンで指されている英文を見た名前は、「はい…」と素直に返事をすると気合を入れなおしてシャーペンを握りなおす。
すっかり外は真っ暗になり、教室に残っていたクラスメイトたちもとっくに下校していた。
残った二人は、最後の問題に取りかかっていた。
「じゃあ、最後。それ解いたら終わりな。」
夜久は「はぁー。疲れた。」と自分の物をカバンへ詰める。
その背を見つめて、名前は「できたよ。」と声をかけ立ち上がった。
手渡されたプリントの最後を見て、空欄のままなそこに夜久は何度も見直した。
「はぁ?真っ白じゃねぇか…」
眉間に思いっきり皺を寄せ、名前へ視線を向けた夜久の視線を手で遮り、唇を寄せた。
ほんの一瞬、触れただけのキス。
「や…へ?」
お礼を言おうとした名前の腰に回された片腕。
もう片方の手で、目を隠されていたその手首を掴み、ニヤリと不敵に笑う彼がいた。
「まさか、これだけつき合わされてそれだけで済まそうなんて思ってねぇよな?」
「夜久…あの…っ…」
「名前にしてはよくできた解答だったけどな。」
珍しく、優しく褒めた後、彼は彼女の唇を奪った。
Q.Who do you love?
白の色鉛筆で書いた愛の言葉
無言のキスで伝えて
-END-