Collaboration project!【更新中】 | ナノ

俺の方がいい人じゃん?


図書館に寄って、いつもより少しばかり帰宅時間が遅くなった名前。
あちらこちらから部活をしている生徒の声がしてくる中、靴を履き替え、そのまま門へ向かう。


「名前〜」
「花!」


声がした方向を見れば花がジャージ姿で駆け寄ってきているところだった。


「さっきロードワーク終わったんだー」
「おつかれ〜」
「名前今までいたの?図書館。」
「そう。」
「本なんてよく読むねぇ〜」
『花〜行くよ。』


部活の仲間に呼ばれた花が手を挙げる。
「じゃね、名前。気をつけて帰るんだよ?」と手を振って去っていく。
花の姿を見送った名前は帰路へ出た。


その頃、天童は牛島と他愛のない話をしながらロードワーク中だった。
「ねぇ若利くんは甘党?辛党?俺はね、甘いの好きだけど…」といつもの如く一人でペラペラと喋っている。

もう少しで学校の敷地内に入るところまで来た二人だが、牛島が何かに気付いた。


「?天童。」
「なに?若利くん。やっと甘党か辛党か思い出した?」
「いや…」
「?」


珍しく立ち止まり、指をさす牛島。
天童が見た先には見覚えのある声と、顔。


「ねぇ〜いいじゃん?ちょっとくらい遊んでもさ〜」
「いや…早く帰りたいので。」


知らない高校の制服を着た、知らない男と…白鳥沢の制服を着た、冷たい女のコ。
どうやら言い寄られているらしい女の子の方がとても困っている様子。


「…うーん。」
「…。」


少し考える天童と、その横顔を見つめる牛島。
パッと表情を明るくした天童は隣の牛島を見て「若利くん、ちょっと…」と手招きをした。
耳打ちされたそれに頷く牛島。
天童は「じゃ、いこっか。」とロードワーク中と同様に走り出した。


帰路についたはいいものの、門から少し離れたところで知らない制服を着た男に捕まった名前。
以前までよくあったことなので、適当にあしらう。
しかし、しつこい。


「白鳥沢の子でしょ?賢い上に美人って、声かけられるだろ?」
「いいえ。」
「またまた〜嘘ばっかり〜」
「こういう性格なので、すぐ諦める人が多いです。」
「あー、冷たい子?俺クールな子ほど燃えるんだよねぇ…」


げんなりする名前に構わず手を掴んできたその男。
内心“めんどくさいなぁ”と思っているところに、「あれ〜?名前ちゃんじゃん。」と背後から声をかけられる。

その声に、過剰に反応する名前を見てその男も手を離した。


「…天童。」
「こんな時間まで何してんのさ〜。」


ずいっと顔を近づける天童。
目を逸らす名前は「図書館寄ってて遅くなった…」とだけ言う。

男が天童と牛島を見て「これから俺と遊ぶんだよ。邪魔しないでくれませんか?」と口角を上げる。

チラッとその男を見た天童が名前の腕を掴む。


「へぇ〜!凄いじゃん!名前ちゃんモテるからさ〜でも冷たいじゃん?だから誰も君までしつこく迫ったりしないわけよ。」


バカにしたように話す天童。
名前が「天童。」とシャツを握って止めに入る。


「人の女に手出すなんていい度胸してんね。俺でもできなかったこと簡単にしてくれちゃってさ。」
「へぇ〜いい人だな。お前。」
「そう。オレいい人なんだよね〜…」


ジロッと見た天童の目に、身構えるその男。


「だから名前ちゃんも俺に惚れたのかもね。」
「…は?」
「若利くん。」


チラッと背後に立って聞いていた牛島に合図を送る天童。
牛島は天童に先ほど耳打ちされた通り、彼の目の前に立ち、背の低い彼を見下げた。
下から見る牛島のその表情と威圧感はすごいもので…


「名前ちゃんと遊ぼうなんて考えない方が身のためかもね。」
「…お前何かに惚れるわけ…」
「少なくとも俺の方がいい人じゃん?」
「…。」


“確かに…”と思ったらしいその男がチラッと名前を見る。
名前は天童の背に身を隠した。

男は目の前の牛島の威圧感により奥には行けず、そこで断念する。


「くそっぜってぇリベンジしてやるからな。」
「は?だから来ない方がいいって言ってんじゃん。バカなの?」
「…苗字には手を出すな、天童は怒ると怖い。」
「え…」


天童をよく見てみれば、背が大きく思ったより威圧感があることに気付いたその男が悔しそうな顔をして引き返していく。


「じゃあ名前ちゃんは俺が部活終わるまで教室でお勉強しててネ。」
「えぇっ…やだ。」
「ヤダって言われても無理矢理連れていくもんね〜あ、若利くん。」
「?」


名前の腕を引っ張って行っていた天童が振り返り牛島に「ありがとね。」とお礼を言う。
それに釣られるように名前が「ありがとう。」とお礼を言う。
牛島は真顔のまま「体育館に戻る。」とだけ言って走り出す。


「…あ!!若利くんが甘党か辛党か聞き出すの忘れた!!」
「…何の情報収集?」


愕然としている天童の隣で名前は首を傾げた。


「天童…」
「んー?」
「ありがとう。」
「じゃあお礼のキスちょーだい。」
「…。」


そう言って身を屈める天童。
名前は門の真ん前であることを確認した後天童の手を引いた。


-END-