キミの腕の中
暑い暑い合宿の夏。
合同合宿ももうすぐ終わりを迎えようとしていたある日の音駒高校のマネージャーが、汗を拭ったその時…
「名前」
「はい!」
「……ううん」
研磨は何か言いかけて、彼女を見てから顔を背けどこかへ行った。
当の本人はドキドキと心臓を高鳴らせる。
早朝、部員達を起こしに掛かろうと彼らの寝る教室に足を踏み入れた。一番扉の近くで寝ていたのが、たまたま研磨だったこともあり、名前は、つい…魔が差したのだ。
彼を起こそうと手を伸ばすも、ぐっすり眠る彼の寝顔を見てその手を引っ込めた。
研磨って…寝てたら、ただの美男子なんじゃ…
髪さらさら…こんなに金髪なのに…
綺麗な肌してるし。ずるい。
普段、彼から顔を背けられることが多く、まじまじと見れることなんてないため、見入ってしまう名前。
彼が僅かに動くと、髪がさらっと彼の顔に落ちた。
…な、なんか…やばい感情が襲ってくる。
シャツから首筋、首筋から顎のラインが淫らに見えてしまってたまったものではない。
色気だらけ…男の人にも色気ってあるのか。
じっとその姿を見ていたら、彼の胸元から除く色のついたもの。
……ゲームだ。
ゲーム機を胸元に乗せて寝ているようで、それはもう少しすればそこから落ちそうになっている。
あわよくば研磨がどんなゲームをしているのかを確認できたら…なんてことを考えて手を伸ばしたせいか、勢いよくその腕を掴まれた。
驚きのあまり声が出そうになったが、反対の手で人差し指を立てる彼を見て。
視線が、寝ていたはずの彼とバッチリ合った。
「おっ…」
「しー」
起きてたの?!いつから?!と聞きたい気持ちで山々な名前に、目を据わらせた研磨が念を押すようにもう一度黙らせた。
誰かのイビキと寝息がするそこで、研磨はその腕を引っ張る。
「!?」
声も出せないこの場で、彼は何をしたいのか?
身を支えるべく反対の腕でふとんをつけば、目の前に彼の顔があった。
「名前」
優しい声に、ドキリとする。
「ゲームはあげれないけど…」
寝起きの彼の声は掠れていて、それが余計にドキドキさせた。
「一緒に寝てあげてもいいよ…」
研磨はそのままウトウトし始めた。
…寝ぼけてる…?
そのまま規則正しい息遣いが聞こえてきたため、やはり先ほどの言葉は寝言に近いものだったらしい。
「…」
一緒に寝て良いって言われた(寝言)し寝てみようかな…ちょっとだけ、なら。
これが、私の言う、魔が差しただった。
「名前…」
寝言か起きているのか、定かではないが研磨に抱きしめられたのを覚えている…から、目が覚めた時、恥ずかしかった。
「研磨、覚えてる?」
「?何のこと?」
布団を片しているときに聞いてみるも首を傾げた彼。
うーん、やっぱり寝言だったのか…
「……」
浮かない顔をしている彼女をひっそり見ていた研磨は視線を落とした。
…言えない。
-END-