Collaboration project!【更新中】 | ナノ

人懐っこい者と引き寄せる者


音駒高校バレー部が練習を行っている体育館の一角で、とびきり厳しい練習を受けている部員がいた。


「腰もっと低くしろっ」
「…こうっすか?」


体育館の端で黒尾にバレないように夜久とリエーフの練習している様子を見つめる研磨。
そこへ駆けていく一人の女子、名前の姿だ。
手にはタオルを持っている。

名前を見たリエーフが「夜久さんっ休憩させてくださいっ」と言えば、夜久は「5分」とだけ呟いた。


「5分って短くないですか?リエーフ大丈夫?」


タオルで汗を拭うリエーフは「大丈夫です!俺体力には自信があるんで!」と笑顔を向ける。
「すごいね。」と名前が言えばリエーフは「えへへ」と笑う。

夜久が「さっき休憩したばっかだろ。」とリエーフを見て呆れる。


「夜久さん厳しいっす!」
「そう言える元気があるならもっと厳しくするか?」
「嫌です!!はやくスパイク打ちたいーっ」


リエーフの嘆き虚しく夜久の練習は再開された。
名前はその場から離れ、部員たちのボトル回収へ向かおうとした時視界に入った研磨の姿に駆け寄る。


「研磨はもう終わり?」
「うん…リエーフ、頑張ってるね。」
「うん!夜久先輩5分しか休憩させてくれなかったのにリエーフ、“大丈夫です!”って。リエーフの笑顔見ると本当に大丈夫な気がしてスカッとするよね。」


真っすぐリエーフを見る彼女の横顔を見た研磨は視線を彼女から離した。


「…リエーフって誰にでもああだよね。」
「?ああって?」
「みんなが嫌いになれない、人懐っこいタイプ。」
「…言われてみれば、そうかもね。」


なんか猫みたいだよね。と言った名前に頷く研磨。


「おれ、絶対できないから、たまに羨ましい。」
「ふっ…たまになんだ。」


笑った名前を見上げていれば彼女は研磨を見て「でもさ。」と少し首を傾げた。


「研磨はみんなを引き寄せることができるよ?」
「え?」
「いつ見ても研磨の周りには誰かがいるの私知ってるもん。」


研磨は眉間に皺を寄せた。


「…そう?」
「そうだよ。リエーフだって研磨が寄っていこうとしなくても“研磨さん研磨さん”って研磨大好きだし…部活では私、やきもちを焼きまくりなのです。」


へへっと笑う名前に言われ、考えてみればそうかもしれない。と思う研磨。
彼女がそう言ってしまえば自分の気持ちは簡単に変わってしまう。

名前のすごいところ。


「おい!けんまぁー!練習するぞー!」
「ほらーモテモテ。」
「…嬉しくない。」


…もしかして、名前の言った“引き寄せる力”って…これ?


「それは何か…違う気がする。」
「?」
「おい研磨ぁ!早く来い!」


山本に催促され重い腰を上げた研磨だったが、足先は逆の方向を向いた。


-END-