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類は友を呼ぶ


俺が黒尾と出会ったのは、1年の夏休み中の時だった。
夜久から黒尾の話はよく聞いていたが、姿を見るくらいで他クラスだと関わることもなく、話す機会すらない。
そんな状況下にいた俺たちは、夏休みの部活に励んでいる時に話す機会があった。

猛暑、炎天下のグラウンドで走り回る結葵を見つめるは女子たちの姿と、体育館で部活をしていた男子バレー部の姿。


「サッカー部の何がいいんだ」
「醜い嫉妬か?」


黒尾が他校と試合をしているサッカー部の姿を見ながら吐き捨てるように言ったが、夜久は小さく笑う。黄色い声の主たちの視線が誰だか知っているのだ。


「あ!!夜久ー!」


声の届くところまで来た結葵が満面の笑みで夜久に手を振る。
ユニフォームを靡かせてそのままコートへ戻っていった彼を見て、黒尾が夜久を見た。


「誰?」
「同じクラスの苗字」
「聞いたことあるな…」
「女子が話してたんだろ?」


女子…?と首を傾げていた黒尾を置いて、しれっと立ち上がる夜久に黒尾も思わず立ち上がる。


「アイツ、モテるから…あの元気さが女子はいいみたい」


先ほどの、手を大きく振って自己主張する結葵の姿を思い出し、ふっと小さく笑った黒尾。


「バカっぽいけどな」
「間違いねぇな。すげぇシスコンだから、あれを晒せばいいかもなー」


そうしたらモテる苗字じゃなくなんじゃね?と苦笑いをしながらそう言った夜久を見て、黒尾は不思議な感じがした。


「嫌そうに見えねぇけど…」
「…うるせぇ、いろいろあるんだよ。良いところとか…」
「それでモテんじゃね?」


黒尾はまだ知らない。この時の夜久の気持ちを。




「みてみてっ黒尾がいる!」


ある日の休み時間、サッカーボールを持って夜久とグラウンドへ行こうとしていた時、結葵の耳に入って来たクラスの女子たちの声。
なんだ?と視線を彼女たちへ向ければ、廊下の向こうの方にいる黒尾の姿があった。


「おい、苗字行かねぇの?」


背後から夜久が結葵に声をかける。
「なぁ、」と言えば、不思議に思った夜久が結葵の隣から顔を出してそちらを見た。


「なんで黒尾はモテんの?」
「知らね」
「やっぱ女子は、ちょっと俺より背高くて、ちょっと俺よりイケメンな奴がいいのかなぁ」


“ちょっと”がとても気になるがあえて面倒くさいことに突っ込むことをしないのが夜久である。


「…そういやぁ黒尾も同じこと言ってたな…」


似た者同士だな、お前ら。と言った夜久の言葉はフラグという名の回収物に成り代わる。






「うぉ!可愛いコいる!!」
「名前より可愛いのか?」


3年5組の教室。
窓に張り付いていた結葵がぱっと黒尾へ視線を向けると、にやーと不敵に笑う。


「んなわけねぇだろ〜?」
「だよな」


二人してニコニコしているその姿を遠くから夜久は見て呆れた。


「似た者同士って、怖いわ…」


俺はお前たちと違うんだ、と思っている夜久だが、黒尾に言わせれば終いだ。


「誰よりも名前探してるくせに何言ってんだよ」
「……」
「いえーい!やっくん仲間ー!」


彼らこそ、類は友を呼ぶ。

-END-