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Spring Road


青い空の下でピンク色の桜がひらひらと落ちていく、季節は春だ。
そして、都立音駒高校にも春が来た。
新しい制服の袖に腕を通した新入生たちがこれから3年間、様々なことを体験していく。

全ての人が初対面のクラス内で苗字結葵は容姿で女子を虜にする。
この時点で男子は“気にくわないヤツ”と認識するが、自己紹介でそれをも裏切る。


「苗字結葵です。サッカー大好き!いや、バスケも好きだしー、野球も好き。んで、女の子も大好き。でも大切にできる自信とかないから、友達なら大歓迎なんで、よろしくお願いしまーす。」

「「…。」」


ざわつく教室。このハッキリした性格で彼は男子をも虜にした。
それと同時に隣から「おい。」と声をかけられ視線を向けた先には瞳の大きな背の低い…男?


「…男だよな?」
「失礼な奴だな…。」
「え、女?!」
「早く座れ。」
「あ、はい。」


促されたまま腰を下ろせば、結葵に声をかけた人が立ち上がった。
あ、次だったのか。と理解する。


「夜久衛輔です。バレー部に入部予定です。よろしくお願いします。」
「…なんだ、男じゃん。」
「男で悪かったな。」


ニッと笑う結葵。
夜久は彼の笑顔を見ては何も言えなくなってしまい視線を逸らした。



入学して少しすれば部活体験の期間が始まる。
結葵は体操服を来てグラウンドを楽しそうに駆け回っていた。
サッカーをずっと続けている彼の巧みにボールを操っている姿はすぐ先輩たちの目に留まった。


『アレ誰だ?』
『おぉ…すげぇ。1年だろ?』


ボールを持ってゴールまで一直線。
体験初日から彼は輝くものを見せた。

休憩に入り、ちらほらと見物者がいるのを見てわざとそこから離れる結葵。
休憩中もボールを持ち歩き、見物者から逃げていれば体育館の傍へ辿り着いた。
大勢の声が聞こえ、興味があるがゆえに中を覗いてみる。


バレー部じゃん…背たっけぇヤツばっかだなぁ…。


中をぐるっと見渡せば、同じ部活体験中の体操服姿の人を目撃し、よく見てみればコートの中で練習中だった。


「…夜久だ。」


小さく呟いた結葵の瞳には隣の席の夜久が映る。
試合形式で練習を行っているように見えるそこで、結葵を虜にした。


「…かっけぇ。すげぇ男じゃねぇか。」


女だと思った瞬間のことを後悔する。
コートから出て来た夜久が結葵の元へ歩み寄ってくる。

汗を腕で拭った直後、視線が合った二人。
夜久が「部活中だろ…何してんの?」と声をかける。
結葵はボールを腕に抱えたまま「お前すげぇなぁ!」と興奮した様子を見せた。


「見てたのか?」
「おう!たまたま覗いたら夜久見っけたからさ〜めっちゃカッコいいから俺ずっと見ちゃってたぞ〜」


さすがにド直球で褒められれば誰であれ嬉しいものである。
夜久は結葵の様子を見てふっと笑った。


「そっちは、お得意のサッカーで可愛い子虜にしたのか?」
「いーや?可愛い子いねぇもん。」
「苗字の可愛いはハードルが高そうだな。」
「そんなことないと思うけど…夜久は可愛い子が好き?」
「俺?うーん…美人よりは可愛い方が。」


ボールを抱えニコニコする結葵。


「苗字って無邪気だよな。いつもそんななの?」
「ん?好きなように生きてるだけさ。」
「ふっ…お前面白いな。自己紹介の時から思ってたけど。」


夜久の言葉を聞き、結葵はボールを足元へ落とした。


「俺夜久と仲良くなれそうな気がするわ。ってか仲良くなってくれ!惚れた!」
「じゃあ俺にもサッカー見せて。」
「…仕方ねぇなぁ。言っとくけど俺はうまいぞ?」
「自分で言う奴は本当にうまいか、本当にうまくないかのどっちかだよなー。」
「俺は前者だぞ?」
「ホントかー?」


話し込む結葵の背から『苗字ー!再開するぞ!』という声が聞こえてきた。
「はーい!今すぐ行きます!」と返事をした結葵に手を振る夜久。


「また後で見に来るわ〜」
「来るな。」
「毛嫌いしないでよ〜」
「…はいはい。」


すっかり結葵の扱いに慣れた夜久は早く行けと手を振り続ける。
やっとグラウンドへ走っていった結葵の背を見ながら「変な奴だわ…」と明日からの高校生活を楽しみにするのだった。


結葵がシスコンだとわかるのはこれからすぐのお話。


-END-