As a friend, I'm always on your side,no matter what happens.
初めて、その噂を耳にしたのは部活中だった。
それは残酷に、なんの前触れもなくやってくる。
「苗字と天童が付き合ったって話し、アレ、マジなの?」
リフティングしていたはずのボールはコロコロと俺の視線の先を転がっていった。
「…なんて?」
動揺を、隠しきれていない。
目の前の二人は俺を見て、ヤバイと思った様子だったのを今でも覚えている。
隣の奴と目を合わせると苦笑いをした。
「俺も噂で聞いただけで、実際そんな様子見たことねぇけど…天童と苗字、付き合ってるって噂があってさ。」
「苗字って目立つじゃん?目立とうとしてないのに目立つ際立った女だろ。だからみんな注目してんだよ。しかも元カレがお前だしな。」
「それは俺たちとしても興味があるわけで…」と話す二人。
「でも相手が天童ってハッキリしてる時点で、誰かが見たんだろ。恋人に見えるようなことしてるとこ。」
ボールを足に引っ掛ける。
チラッと体育館へ視線を移す。
その時、ポンと肩を掴まれる。
「相手が悪いよな。」
「天童か…とうとう我らが苗字を奪いに来たか。」
「我らが苗字って何だよ…」
苦笑いをする奏生。
「だって奏生と付き合ってた時だって話しかけ難かった。」
「あの美人は罪。」
「お前らほんと外見な。」
聞いて呆れる。
俺は顔で選んだんじゃねぇんだよ。
高く蹴りあげたボールをボーッと見つめながら、思うことはただ一つ。
相手が誰だろうが、名前が決めたならそれでいい。
「あ!奏生くーん!」
ボールが地についたと同時に、名前を呼ぶ大きな声がしてそちらへ視線を向ける。
手を振る名前の友達、花の姿とその横で少し遅れて手を振る噂の彼女。
先程まで天童とどーのこーのと言っていた二人が名前の姿を見てふわふわとしている。
そんな姿を見ると、思う。
…友達、知り合い…なんか、それだけでいい気がしてる。
手をあげれば、花が「きょうもカッコイイ!!」と叫ぶ。
ふっと笑みが零れた。
黙って手をあげれば、とうとう花はそばにいた彼女に抱きついた。
「あーっ!私奏生くんと付き合うわー!」
「顔だけで選ぶんじゃないの。」
「顔じゃないよ!あの優男!見て!サッカー部の爽やかイケメン!」
「結局顔に戻ってる。」
「ねぇー名前〜」
チラッとこちらを見た彼女が、困ったような顔で「ごめん。」と言ったのがわかった。
手を振れば、名前は前を見て歩き出す。
その光景を見ていた二人が、羨ましいだの、紹介しろだのと言う。
さっきまで天童と噂があるって言ってたのはどこのどいつだよ。
呆れた奏生は「はいはい。」と軽くあしらうと、足元のボールを高く蹴りあげた。
-END-