Joker Lover | ナノ
Queen of Hearts
疑いがかけられる

◆ ◇ ◆


「でも、クロは寺井先生のこと嫌いだから、そうやって悪い方に持ってくんでしょ?」

「…寺井を信じる信じないは名前の自由だけど…アイツ性格悪いんだぞ?」


名前は二人の会話を聞いていなかった。

ただ黒尾の言葉が事実ならば、寺井は自分のことを思って言ってくれたものではなく…その上、委員長になったからといって、本当にクラスメイトと仲良くなれるのか怪しくも思えてきていた。


「嘘…なのかな」


深刻そうな顔をしている彼女を見て、黒尾と研磨は顔を見合わせる。


「いーじゃねぇか。友達いなくても」

「先輩は人気者だからそんなこと言えるんですよ」


無言になる黒尾を不思議に思い、ちらっと視線を向けると考える素振りを見せた。


「取り合えず断れ」

「…え?」


それだけ名前へ放ち、部員を集めに行く黒尾。
研磨は彼女に「何か考えてると思う」とだけ言って去る。

残された名前は眉間に皺を寄せるしかできなかった。


「…断るか」


寺井と話してみない限り、黒尾の言葉が真実だとも思えないため名前は翌日、寺井に聞きに行くことにした。


「あ、俺も連れていけ」

「えぇっ…」

「なによ」


黒尾からの願いに渋る名前。
理由は、夏休み中の遭遇時の記憶まで遡る。
あの時の空気が、彼女はとても嫌だったのだ。

あの、不穏な空気が。


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