Queen of Hearts
気づき
◆ ◇ ◆
眉間に皺を寄せる黒尾の表情が視界に広がる。
「は?」
隣をそっと研磨が通っていくのがわかった。
「友達の作り方を教えてください」
「気づかねぇようにしてた現実をとうとう突き付けて来たなお前」
はぁ〜と深くため息をついた黒尾は腕を組む。
「でもなんで急に…?」
「あ、そうだ。私、文化祭の委員長に任命されたんです」
「は?クラスメイトにか?それイジメなんじゃねぇの」
あー違います違います、と首を必死に横に振る名前。
「寺井先生にです」
「はぁ?教師直々に委員長任命とかありか」
眉を八の字にして呆れたような口調で黒尾は言う。
それを聞いていた研磨が「ウチではありなんだと思う」と答えた。
「その時に言われたんです。“友達を作れ”みたいなことを」
「知ってるなら手助けするとかだな…」
「それで、私を文化祭の委員長に任命してくれたみたいです」
「…」
再び溜め息をつく黒尾に、彼女は首を傾げる。
何に、溜め息をついているのだろうか?
「いいか、名前。それは寺井がクラスメイトをわかった上でお前を任命したんだ」
「はい?」
「大半の生徒がしたくねぇ文化祭の準備、それに出させなければならない大役を担うのは委員長だ。たとえ友達が多くいたとしても、集めんの結構苦労すんだよ」
組んでいた腕を下した黒尾を見上げる。
「口がうまいから、先生」
「研磨……」
少し俯く名前。
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