Joker Lover | ナノ
10 of Clubs
自信もっていいよ

◆ ◇ ◆


俯き気味に話す名前に聞いていたらしい蓮耶が口の中の食物を飲み込むなり言った。


「イイ女だよ」

「その言い方は…」

「なんだ孤爪」

「もっと違う言い方なかったの」


言い合う二人にふっと笑う。
正反対の二人が言い合っている様は、滑稽だった。


「名前はクロと知り合う前から知ってたんでしょ?」


突然の研磨からの問いかけに、表情が徐々に元に戻っていくのがわかる。
彼女は「そうだよ」と返事。

研磨が何を思ってそれを問いかけたのかは、すぐわかった。


「名前から見たクロって、おれはわからないけど…憧れは多少持ってるんでしょ?」

「持ってる!」

「その人から好意を与えられてるって考えたら、いいんじゃない?」

「…?」

「大袈裟かもしれないけど、クロから選ばれた人、つまり特別。それだけで、クロのこと好きな女子は名前をどんな人か見てるよ」

「うーん?」

「…魅力はあるんじゃないかなって言ってる」


“だから、自信もっていいよ。”


たぶん、と付け足された研磨からの言葉に心打たれる。


「研磨を師匠にしようかなと思った今」

「仕方ないから弟子にしてあげてもいいよ」

「ぶっ」


隣で聞いていたらしい蓮耶が、飲んでいたジュースを気管へ流したらしい、咽出した。


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