10 of Clubs
弟子入り
◆ ◇ ◆
お昼休み、研磨の真ん前に居座る名前。
嫌な顔をして彼は言う。
「食べ難いんだけど」
「研磨さ」
「…なに?」
ジッと見つめ続ける名前にチラッと視線を向けた。
「私と一緒に黒尾先輩に弟子入りを頼まない?」
「……」
隣で黙ってスマホ片手にもぐもぐ食している蓮耶を見た研磨。
「どういうこと?」
「寺井に文化祭の委員長を頼まれたらしくてそれを引き受けたんだよ」
「うん」
「……俺が知ってるのはそれだけだ」
「……」
この二人に付き合っていると、毎日必ずと言っていいほど溜め息が出る。
研磨の幸せは減り、疲労は増えるばかりだ。
「名前、どうしてそうなったの」
「私、友達いないに等しいでしょ?」
「まぁ…」
「そんな中文化祭の委員長となると…手伝ってもらえない危機が襲ってくるんだよ」
名前の言いたいことは大体わかった研磨。
「つまり、クラスメイトと仲良くなってしっかり文化祭委員長を成し遂げようとしてる?」
「うん。クラスメイトと仲良くないと…何も楽しくないまま終わるよ」
彼女の言っていることはごもっともだった。
研磨はその訳を踏まえて彼女のことを考える。
「マネージャーとしては打ち解けられてきてるし…部員ともすぐ仲良くなれたし…普通に名前から声かけていけば大丈夫だと思うけど」
「…人として大丈夫かな?」
「え?」
名前の不安は研磨の考えているところとは違うところのようだ。
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