Joker Lover | ナノ
10 of Clubs
師匠

◆ ◇ ◆


教室へ入り、席に着いた名前に問いかけた蓮耶は、相当気になっていたようだ。


「何で怒られた?」


第一声に断定的な言葉。
それは蓮耶の名前に対する印象に疑いがかけられた。


「どういう意味?」

「いや…だってさ、なんで呼ばれたかわからねぇのに呼ばれたんだろ?」

「結果的に本当によくわからないことだった」

「…つまり、怒られた?」

「怒られてないよ」


なんだよーと椅子に背をあずけ項垂れる蓮耶。
名前はそんなことより、と彼と向き合うように座りなおした。


「ん?なに」

「あの…師匠」

「師匠?!」


教室内に響き渡る蓮耶の声。
正直に言う。


「うるさい」

「うるさい声を出させたのはどこのどいつだ、え?」


眉間に皺を寄せる名前を睨む彼。


「そんなに変な事言った?」

「言ったわ!俺の事なんて呼んだ?」

「師匠」

「誰が師匠じゃ」

「…満更でもないくせに」

「なんでわかった…いや、何の師匠だよ」


簡単なヤツだなー、と小さく笑う名前。
もちろん、訳があって蓮耶のことをそう呼ぶのだ。

先ほど寺井から直々に委任された文化祭委員長を引き受けたばかりの彼女はそれはもう必死だった。


「どうか弟子に人々から人気を得る手段を伝授してください」

「弟子取った覚えないけどな」


ムッとした名前は椅子から立ち上がり、蓮耶の肩を掴む。
周りのクラスメイトからの視線が痛い。


「理屈ばっかり言ってないで私に伝授しなさいよ」

「お、俺じゃなくても黒尾の方が人気だろうが」

「…あ」


蓮耶の肩を掴むその手を名前はそっと離した。


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