9 of Diamonds
どういう風の吹き回し?
◆ ◇ ◆
「研磨、研磨っ」
背後から声をかけられた研磨が振り返る。
ポニーテールをした体操服姿の名前を見て嫌な顔をした。
「なに?その顔。」
「…べつに。」と名前から顔を背ける。
「文句?私になにか言いたいことがあるんでしょ。」
「…クロは?」
「黒尾先輩ならサッカーだからって外に行ったよ。」
「そう…」
「ねぇ!」
「!!」
背けていた顔の前に名前が現れて驚く研磨。
「近い。離れて。」と彼女の肩を押す。
「…研磨に、嫌われるようなことした?」
「違うし…目に毒なだけ。」
「目にも入れたくないほど私が醜い…と。」
「…用件を早く言って。」
彼女には参る…といった感じに表情を歪めた研磨。
「蓮耶が、研磨と作戦を立てたいんだって。」
「…どういう風の吹き回しか聞いておいて。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。蓮耶はそもそも研磨のこと気に入ってるし、仲良くなったと思ってるんだよ?なのに…」
そういう言い方は無いと思うよ…そう、言おうとしたが、名前は口を閉じた。
この時の研磨の表情が、どこか冗談っぽいと思えたからだ。
「…クロは嫌いだよね。」
「…そう、だね。モテる人嫌いだからね。」
「岸も、モテるんでしょ?」
「…まぁ、うん。」
女子の中ではよく噂になっている。
うるさいけど、面白いから良い。
そんな声がするんだ。
周りに人一倍気にかけている研磨は、そういう声を耳にすることだろう。
「なんか…嫌いになれない人だよね。」
「…うん、わかる。」
研磨の言葉に一番共感する。
腹立つこと、うざいこと、うるさいことなんの…だけど、どこか嫌いになれないヤツであることには間違いない。
研磨がふっと口角を上げたのがわかった。
「岸に言っておいて。」
「なんて?」
「面倒くさいことしないから、おれ。」
「…わかった。」
くすくすと笑う名前を横目に、研磨は首にかけていたタオルを彼女に渡した。
それを見て目を丸くする名前。
「NEKOMAのタオル!えっしかも背番号入ってる!欲しい!!」
「あげる。」
「えっいいの?!」
口角を上げた研磨が「わからないけど…持ち主に聞きなよ。」とだけ言ってその場を去っていった。
ん?持ち主って…とそのタオルを再び開いた。
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