9 of Diamonds
どうやって戦う奴
◆ ◇ ◆
スポーツ大会当日。
体操服を来た研磨の頭の上にはタオルが被られていた。
その姿を見た名前が「なんでタオル被ってるの?」と問いかける。
研磨はふいっと彼女とは反対へ視線を向けると「視線が痛い…」とだけ呟く。
それは、間違いない。
だって、ずっと岸が彼を見ているのだから。
至って彼は研磨を睨んでいるような視線ではなく、普段の視線を向けているだけ。
だが、そこには興味、関心といった感情が読み取れた。が、それは研磨の苦手な視線。
「ちょっと岸。見すぎ。」
クラスメイトと集まっていたそこへ入っていき、岸にそれだけ告げれば、まじまじと今度は名前の方へ向けられる視線。
「ふーん…」
「な、なに…」
「いや…」
「!?」
ぐっと至近距離になった岸の顔に目を丸くした名前。
暫く見つめたあと、屈めていた身を上げるなり「今まで気にしなかったけどよ、お前いい身体してんな。」と言い放つ。
「…キモ。」
「いや、一応女なんだな、って言ってんの。」
ムッとして言い返そうとした時、背後から腕を掴まれ身がよろけた。
頭上から聞きなれた声がした。
「もうすでに人の女なんで、手、出すなよ。」
通りがかりの黒尾の登場に岸は「あーはいはい。」と適当に返事した後、「あ、そうだ。」と黒尾に向き直る。
「孤爪なんすけど…」
「研磨がどうかしたのか。」
頭を掻き、面倒くさそうにする岸。
しかし、その腕を下ろすなり小さな声で問いかけた。
「どうやって、戦う奴なんすか?」
「…。」
その質問に、名前も黒尾も言葉を失くした。
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