9 of Diamonds
可愛い
◆ ◇ ◆
部活後、珍しく名前を先に帰らせた黒尾。
残らされた研磨は嫌な顔をしたままボールを持つ。
「なんで、名前と帰らないの?」
その鋭いと言える研磨の質問に、ビクリとした黒尾はふっと笑う。
「いつも一緒に帰るなんて決まりねぇし…」
「それはいいとして、また名前で悩んでるの?」
「…なんでわかんの?お前。」
参った…という風に、頭を掻く黒尾。
研磨はボールに視線を落として、その場に座り込んだ。
「名前、笑った顔、見た?」
「ん??」
研磨の予想外の質問に黒尾は拍子抜けする。
ド直球に彼なら「何に悩んでるの。」と聞いてきそうな場面だったからだ。
「なんか、違ったか?」
元気なかったとか?と不安になる黒尾。
研磨は首を横に振った。
「クロにこんな事言うの、あれだけど…」
「…あ、俺にとってもいいことだな、それ。」
言う前に、口角を上げた黒尾。
じっと彼を見上げながら、その先は敢えて言わずに
「で、何に悩んでるの?」
「…お前、覚えてろよ。」
本題に引きずり込んだ。
言って、良かったのだろうか?
先ほどの彼女の笑った顔を見て、少しだけ『可愛い』と思ったこと。
まぁ…クロがそうしたことには、変わりないし…
いっか。
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