Joker Lover | ナノ
9 of Diamonds
気持ち悪い

◆ ◇ ◆


「何で黒尾先輩って、あんなにカッコイイの?」

「…まさか、名前からそんな言葉を聞くことになるなんてね。」


放課後の部活開始直前、準備中の1年を見守りながら研磨が言った。
その言葉に首を傾げる。


「どういうこと?」

「だって、最近までクロのこと知らなかったし…初対面のときだって、クロのこと好きになるような人には見えなかったから。」

「私が恋をするような人間じゃないって言われてる気がする…」

「そうじゃなくて、クロみたいな人を好きにならないと思ってた。」

「あぁ、遊び人ってこと?」


言い合う二人の姿を見ていた黒尾がその背後でふっと口元を緩める。
彼に内容は全く聞こえていないが、二人が仲良くしている姿に頬が緩んだようだ。


「ニヤニヤしてんじゃねぇ。」

「ニヤニヤして何が悪いのかな?やっくん。」

「気持ち悪いぞ。」


後から来た夜久に突っ込まれ普段の顔に戻した黒尾。
夜久はため息をついた。


「名前は結局、スポーツ大会の種目、何に出るの?」

「バスケ!」

「…シュート逆に入れたりしない?」

「どういうことそれ。」


研磨の心配するような瞳に苦笑いをする名前。


「研磨も結局バレーだね。」

「おれ、アタッカーとか無理。」

「大丈夫、蓮耶がなんとかしてくれる!」


そう言い切る名前を見ながら、研磨の脳裏には無邪気な岸の姿が浮かぶ。
そして、彼の表情は暗くなった。


「…不安しかない。」

「間違いない。」

「ちょっと…」

「へへっ」


笑う彼女の表情を見て、ふと思った研磨。


…名前って、こうやって笑ってたっけ?


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