9 of Diamonds
口実
◆ ◇ ◆
「研磨なんだけどよ…」
「え?」
言い難いのか黒尾は言葉途切れ途切れに問いかける。
「その…大会、何出るって決まったか?」
目をぱちぱちさせる名前。
次の瞬間、ふっと笑った。
「心配性ですね、先輩。そろそろ研磨離れした方が…」
「うーん…アイツをサボらせるわけには…」
教室の黒板に、恐らく現在も書かれているであろう文字を思い浮かべる。
それと同時に先程、岸と交わしていた様子を思い返し、黒尾に伝えた。
「昨日決められずに終わったので、きょうこれからまた決めるんです。研磨にはバレーにしたら?って言ってたんですけど…」
「…アイツしねぇだろ?」
一度頷く名前を見て、ふぅっとため息をついた黒尾は頭を掻いた。
「どーせ去年みたくサボるんだろうなぁ…」
「え、去年サボったんですか?」
「おー。」と言った黒尾に名前は顔を強ばらせた。
「私が何とか出させます!」
「ふっ…無理すんな。それと無理やりさせてもダメだぞ。」
「う…」
そっか…どうしようかな…と考えていた名前の腕を軽く掴む黒尾。
驚きのあまり目の前の彼を見上げた名前に、そのまま顔を寄せた。
「えっ…」
「研磨の話をしたくて呼んだんじゃねぇんだよ。」
ドキリとした。
自分だけが聞こえる程度の声量で低く言われては、たまったものではない。
「じゃあなんで……」
「んー別に理由はねぇけど…あえて言うなら…」
「名前に会いたくなった。」と涼しい顔で言ってのける目の前の彼に、名前は顔を赤くした。
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