Joker Lover | ナノ
9 of Diamonds
口実

◆ ◇ ◆


「研磨なんだけどよ…」

「え?」


言い難いのか黒尾は言葉途切れ途切れに問いかける。


「その…大会、何出るって決まったか?」


目をぱちぱちさせる名前。
次の瞬間、ふっと笑った。


「心配性ですね、先輩。そろそろ研磨離れした方が…」

「うーん…アイツをサボらせるわけには…」


教室の黒板に、恐らく現在も書かれているであろう文字を思い浮かべる。
それと同時に先程、岸と交わしていた様子を思い返し、黒尾に伝えた。


「昨日決められずに終わったので、きょうこれからまた決めるんです。研磨にはバレーにしたら?って言ってたんですけど…」

「…アイツしねぇだろ?」


一度頷く名前を見て、ふぅっとため息をついた黒尾は頭を掻いた。


「どーせ去年みたくサボるんだろうなぁ…」

「え、去年サボったんですか?」


「おー。」と言った黒尾に名前は顔を強ばらせた。


「私が何とか出させます!」

「ふっ…無理すんな。それと無理やりさせてもダメだぞ。」

「う…」


そっか…どうしようかな…と考えていた名前の腕を軽く掴む黒尾。
驚きのあまり目の前の彼を見上げた名前に、そのまま顔を寄せた。


「えっ…」

「研磨の話をしたくて呼んだんじゃねぇんだよ。」


ドキリとした。
自分だけが聞こえる程度の声量で低く言われては、たまったものではない。


「じゃあなんで……」

「んー別に理由はねぇけど…あえて言うなら…」


「名前に会いたくなった。」と涼しい顔で言ってのける目の前の彼に、名前は顔を赤くした。


[ 62 / 82 ]
prev | list | next

しおりを挟む