7 of Spades
お互い様だろ
◆ ◇ ◆
黒尾を相変わらず抱きしめたまま「お昼休み、黒尾先輩が来いって言ったから行ったのに…キスしてたじゃないですか。」と言えば、彼は「はぁー?やっぱり見られてたのかアレ。」と呆れた顔をした。
名前は黒尾を見上げながらムッとする。
「見られてたってなんですか。」
「ちょっと待て。誤解だ。俺はキスしてねぇし、むしろ好きでもないヤツとはしません。」
「…好きだからしたんじゃないんですか。」
「違う。俺の言い方が悪かった。名前以外とはしねぇよって言ってる。」
「…。」
真っ直ぐ目を見て言われたその言葉に堪らず黒尾の胸に顔を埋めた。
その姿にふっと柔らかく笑う黒尾。
「照れてるな?」
「怒ってるんです!」
「へぇー、何に怒ってんだ?」
「…キ…」
「だーかーらー、キスしてません。今、名前にすげぇキスしたいけど。」
「まだ話終わってないです!」
キッと睨む彼女を見た黒尾が一息つく。
「なぁ、名前。俺も一応怒ってんだわ。」
「何にですか。」
「岸ってヤツと仲良くしてるんだって?俺聞いたことないんですが。」
じっと、目を見て言われドキッとする名前。
怒ってる顔というより、これは…
「岸に、ヤキモチですか?」
そう問いかけると、黒尾は「お互い様だろ。」とだけ言って彼女の腕を引く。
無意識の内に黒尾を見上げていた名前はそのまま彼の唇が重なるのを待つ。
「…それで、黒尾先輩とキスしてた人は何なんですか?」
「だから、してねぇって。まぁ、されそうにはなったけど、そこでやめろって言ったから。」
「…。」
「え、なんで御機嫌斜め?」
「…嫌なんです、そういう人が先輩のすぐ近くにいることが。」
そう言った名前の下顎を持ち上げる黒尾。
「素直に言うようになったな。」
唇をゆっくり重ねた。
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