7 of Spades
ふたり
◆ ◇ ◆
教室に戻った名前の表情を見て、蓮耶が頬杖をついた。
「名前、お前どこいってたんだよ。探したんだぞ?」
「…。」
無言で自席に腰を落とした名前に、蓮耶が席を立ち歩み寄る。
彼女の隣の席に腰を落とせば、ジーッとその横顔を見つめる。
「…黒尾先輩に何か嫌なことでもされたのか?」
ピクリと表情が動いたのを、見逃さなかった蓮耶が「黒尾先輩関係なのは間違いないみたいだな。」と前のドアを見つめる。
名前は、ぐっと口を噤む。
様々な感情が巡る中、隣の蓮耶がガタリと椅子を引いて立ち上がったのがわかった。
一人にしてくれるのか…と思った名前だったが、耳に届いたその声に顔を上げた。
「名前いるか?」
「いませんけど…」
ドアで黒尾と話しているのは、先ほどまで話しかけていた蓮耶だった。
「じゃあ研磨いる?」
「いません。」
黒尾がジーッと蓮耶を見つめる。
「お前、名前なんての?」
作り笑いを貼り付けて黒尾が問いかける。
「黒尾先輩に名前覚えてもらうほど、価値のある人間じゃないんで。」
蓮耶も作り笑いを浮かべた。
傍から見て誰でもわかる。
この二人は確実に相性が悪いということ。
「…じゃあ、聞くけど…」
名前の耳に黒尾の声が届く。
「お前がなんで名前を庇うんだ?」
さすがの蓮耶も、口角を上げた。
「ヤキモチですか?俺が男だから?」
バチバチと目の戦いが繰り広げられているそこに運悪く鉢合わせた研磨。
「…何してるの。」
眉間に皺を寄せて、二人を見る研磨に、蓮耶は「黒尾先輩が名前泣かせたんだよ。」と告げる。
この時点で、黒尾も蓮耶も気づいていた。
教室に名前がいる事実を隠そうとしている蓮耶と、名前に謝罪でもしに来たのであろう黒尾のことを。
[ 55 / 82 ]
prev | list | next
しおりを挟む