Joker Lover | ナノ
7 of Spades
何したんだよ

◆ ◇ ◆


PM:01:10
名前は階段を上って行く。
昨日、黒尾に「明日昼休みに来てくれ。」とだけ言われたので現状に至っているのだが、何のために呼ばれたのか分からないままだ。


名前は学校で呼ばれるのは部活のことだけだと思っているので気軽に黒尾のいる教室へ向かう。
やはり先輩のいる教室が並ぶところほど、学校で緊張するところは彼女の中ではあまり無い。


まぁ、職員室はちょっと緊張するよね。


そんなことを考えながら、少しの緊張感と勢いで3年5組の教室を覗き込む。
目立つ黒尾はすぐ見つかった。
しかし…


「駄目です。」

「えー…いーじゃん。ちょっとだけ。」


よく見れば、それはすぐに分かる。
明らかに、黒尾に興味を示す女子が黒尾の隣に立って交渉を述べている。

しかし、黒尾は曲げない。
名前の中では、すぐそういうことをしてしまう人なんだと思っていたのだが、違ったようだ。


まだ彼に不信感を抱いていたことがスッと消えてなくなるのがわかる。


そう思った時だった。
名前が目撃した行動は驚くものだった。


「…っ…」


声が出ない。

教室、しかも一瞬過ぎて周りにはバレていないようだ。
黒尾の驚いた顔だけがこちらからは伺えた。


怒りなのか、苛立ちなのかわからない感情と
悲しさと寂しく思う気持ち。

悔しさも、ジワジワとこみ上げてくる。


どうしようもなく、気持ちが落ち込んだ。


「あれ、苗字じゃん。」


背後から声を掛けられ慌てて振り返った名前。
そこには黒尾と同じクラスの夜久が目を見開いて立っていた。

驚くのも無理はない…


「は…え?どうしたんだよ…」

「夜久先輩…私…どうしたら…」

「何が…」


夜久は気づいた。
彼女がこの場所で泣いていることには意味があると。

教室を見れば、黒尾がちょうどこちらに気づいた様子を見せていた。


「先輩、ごめんなさい。失礼します。」

「おいっ…」

「名前っ」


駆けてく彼女を追いかけようとした黒尾だったが、夜久が止めた。


「お前何したんだよ。」


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