Joker Lover | ナノ
4 of Clubs
部活後

◆ ◇ ◆


部活を終え、部員たちが部室へ帰った後、黒尾が体育館の電気を消した。
名前は真っ暗になった体育館を覗く。


「黒尾先輩?いますか?」

「名前?」


黒尾の声を聞き、真っ暗な体育館へ恐る恐る入っていく名前。
灯りの点いている部屋に入ると黒尾が「用か?」と首を傾げた。


「いえ…」

「ふーん。」

「…。」


特に話すこともない名前は黙ったまま黒尾を見つめる。
ジャージを片手に部屋の電気を消した黒尾。


「えっ!?ちょっとっ突然消さないでくれません?!」


慌てる名前を他所に黒尾はケラケラと笑っている。


「暗いところダメとか言うなよ?」

「お化けとか出てきません?」

「…真面目に言ってんの?」


「どんな顔して言ってんのか見てみてぇな。」と笑いながら名前の手を掴んだ黒尾はそのまま出入り口へ向かう。
掴まれた手から熱が帯びて、体温が上がる。


バカにしながらも、ちゃんと気にしてくれる。

さらっと…優しいことをする。


「そういうとこ、好きです。」


ピタッと歩みを止めた黒尾がすぐ振り返った。


「どこが好きって?」


身を詰める黒尾。
目が暗闇に慣れて、黒尾の表情がわかった名前は眉間に皺を寄せる。


「そういうとこは嫌いです。」

「知ってる。」


壁際まで詰め寄られ、もう目の前の人を見るしか無くなってしまった。


今朝もしたのに、まだ慣れない。
…違う、これはもう慣れるものじゃない。


頬に手のひらが添えられる。


「なぁ、どこが好きだって?」


自分を見つめる彼の口元に視線を移した。


「優しいところが好きです。」


ふっと笑ったと同時に、深いキスを落とされた。



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