4 of Clubs
好意
◆ ◇ ◆
持っていたボトルを部員に渡して「はい。」と黒尾へ歩み寄る名前。
「岸って男なのか。」
「そうです。」
研磨が黒尾には言わない方がいいんじゃないかと頑張っていたことも知らず名前は平然と言う。
黒尾は「へぇ。」と口角をあげれば、「名前が男とねぇ。」と呟きながらジッと見る。
その視線に違和感を覚えた名前が「何ですか…?」と小さく問いかけた。
「好意とかねぇの?」
ハッキリとしたその質問に名前は笑う。
「ないですよ。」
「ホントか?」
「ないです。」
「絶対だな?」
「しつこい男は嫌われるぞ。」
ボトル片手に呆れて立っていた夜久が黒尾に注意する。
名前は「夜久先輩の言う通りですよ、黒尾先輩。」と柔らかい表情をした。
それを見た黒尾が「疑ってたわけじゃねぇよ?ただ…」と少し考える仕草を見せる。
「ちょっと意地悪を。」
「小学生か。」
鋭いツッコみを入れた夜久に「何だと。」と敵視する黒尾から視線を離した名前は研磨の元へ向かった。
座り込んでどこかを見ている研磨に声をかければ彼の髪が揺れる。
「名前?」
「さっきの、“誤解”の意味。わかった。ゴメンね。気づかなかった…」
「あぁ、おれも。」
「ん?」
「…疑ったわけじゃなくて、岸の時みたいに、クロと親し気に話してる姿は見たことなかったから…特別な存在のような気がしたから聞いた。」
研磨は、黒尾先輩のこと好きなんだな。と思った名前。
幼なじみだもんね。
「研磨は黒尾先輩のこと好きなんだね。」
「…おれ、男には興味ない。って、前誰かにも言った。」
研磨の口から発せられた声に、怠そうな色が込められていた。
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