3 of Spades
挙動不審
◆ ◇ ◆
「クロ、おかしい。」
「えっ…いや、おかしくないぞ。」
「…挙動不審。」
合宿中だというのに、雑念だらけの自分に呆れる。
さっきのは、夢であってほしいとさえ思う。
いや…夢じゃなくていーか。
いやいや、駄目だろ。
言ったそばから男子高生の鑑になってどーすんだよ俺。
「注意程度で終わらそうと思ったんだよ…」
黒尾の独り言に、「まぁ、状況が状況だったしな。」と海が返事をする。
「そーなのよ。目の前に可愛い子、しかもずぶ濡れ、下着透けてる、俺のジャージ羽織ってる、二人っきりって…なんのワードだよ。」
「それはお前の理性を十分擽るな。」と夜久が返事をする。
「「で、ヤッたの?」」
「なんで今の俺全部しゃべった?」
黒尾の左右には3年の夜久と海がいた。
黒尾は頭を掻くと「キスして我に返った。」と話す。
海が柔らかい表情のまま「偉いな。」と言った。
「偉くはないだろ。手ぇ出してんじゃん。」
「あー…」
夜久の言葉に海は苦笑いをした。
「まぁ…そうだな。手ぇ出したことには間違いない。」
「名前は?知ってんの?」
「研磨と同じクラスの…。」
「最低だわ。」
「うん。」
いや、覚えてるぞ。
名前だろ?
頭を抱える黒尾を横目に夜久が「まぁ、キス止まりで良かったんじゃね?…良かったのかな?」と海に問いかければ、彼は「まだ良かったと思わないと。」と何とも言えない顔をした。
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