4 of Clubs
始業式
◆ ◇ ◆
朝練の後、黒尾に「着替えたら待ってろ。」と言われ部室のそばで待っていれば、部員たちがぞろぞろと出てくる。
「苗字、黒尾が呼んでたけど…」
夜久が部室の方を指さす。
「ありがとうございます!」とお礼を言って部室へ向かった。
「失礼しまー…」
ガラッと扉を開けた瞬間グイッと引き込まれた。
目の前には白シャツとネクタイ。背で扉が閉められる。
そっと視線を挙げた瞬間、見計らっていたかのように唇を塞ぐ。
「せんぱ…」
「なに?」
「なにじゃ…な…」
スカート下から太腿の上を手が滑る。
「…え?」
何する気なんですか?と目で訴える名前に、黒尾は「目で訴えるな。」と手首を掴んだまま髪を除ける。
「何する気なんですか?」
「何って…」
耳元で「充電。」と言ってのけた黒尾にドキッとする。
「始業式始まる…」
耳から首筋にかけて唇を這わせて行く。
手が制服の裾にかかった。
「名前…」
先輩、実は知ってるんじゃないのか…?
私が名前を呼ばれると弱いことを。
ぎゅっと黒尾のシャツを握り締めた時、予鈴が鳴る。
「…うーん…この状況をどうにか打破してぇもんだよな。」
「この状況とは?」
乱れた制服を直しながら考える黒尾を見上げる名前。
チラッと上から見下げられる。
「もっと名前にどうにかして触れられる時間をだな…」
「そう言えば先輩、付き合ってからあまり触れてませんよね。」
痛いところを突かれた黒尾は頭を掻いた。
「触れてないというより…触れられないんですよ。名前さん。」
ニコリと作り笑いを向ける黒尾に、彼女は首を傾げる。
「?どうしてですか?」
「どうしてってお前…」
頭を抱える黒尾。
「まぁその話はまた今度だ。とりあえず教室行くぞ。」
「えぇ…」
部室を後にする二人。
2年3組の教室に来た名前は研磨の姿を見て思う。
なんか…変な感じだな。
夏休み前まで研磨と話さなかったのに、今は部員とマネージャーである。
「あっ名前来たな。」
右から声をかけられ、視線を向ければ手を振る一人の男子。
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