Joker Lover | ナノ
2 of Spades
誰かに似てる

◆ ◇ ◆


先生の部屋へ入れてもらった名前は扉を開けた状態で「失礼します。」と恐る恐る中へ入る。
先生の部屋はエアコンが効いていてとても涼しい。


「こんなに涼しいのにどうしてそんなに老けたんですか?」

「お前失礼だな〜…さっきは無視したけど。」


「一応先生なんだからな。」と何かのプリントを手にする。
初めて入った先生の部屋を見渡していると、先生が「黒尾と付き合ったのか。」と率直に聞いてきた。
名前は「秘密ですからね。」と先生を横目に小さく言う。


「お前にはもったいない奴だな。」

「さっきの仕返しですか?」


「あー?なんのことかなぁ?」と恍ける。
ムッとした顔を先生に向ければ、名前は「先生から見ても、良い男ですか?」と聞く。


先生はチラッと彼女を見て、ふっと皮肉っぽく笑った。


「バカか。俺よりいい男いねぇだろ?」

「うわぁ…」


本気で引いている名前を見てケラケラと笑う先生。


…誰かに似てるぞ、この人。
この冗談言うところとか、自意識過剰っぽいところとか…結果、冗談だけど。


据わった目で見ている名前に、プリントを置いた寺井が「マネージャーなって、後悔してるか?」と聞く。
聞かれて、思い出すのは先生が言った言葉。


“黒尾が勧誘したんなら…後悔はしないだろうなー。”


後悔は、してない。


「してない…。」

「俺の言った通りだったろー?」

「うん…でも、何で先生は…」

「…わかってたか、って?」


寺井の視線が名前を捉え、口角を少し上げた。
一度頷く名前を見た彼は天を仰いだ。


「去年俺黒尾のクラス持ってたんだけど…黒尾が部長になったって聞いてアイツに“お前部長で大丈夫なのかー?”って冗談っぽく言ってやったら、アイツ何て言ったと思う?」

「なんて…?」


口を動かす寺井。
耳に届いたその言葉を聞いて、固まる名前。
それとほぼ同時に「苗字〜」と背から名前を呼ばれて振り返る。


「お前こんなとこで何してんだ?」


解放されたドアの近くに立って張り付けた笑みを見せている黒尾の姿があった。


「寺井先生に捕まりました。」

「そうそう。俺が捕まえた。」


「お返しします。」と黒尾に笑顔を向ける寺井。



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