Joker Lover | ナノ
2 of Spades
マネージャー

◆ ◇ ◆


合宿を終えた音駒高校男子バレー部は、夏休み終盤に差し掛かっていた。
校舎をパタパタと走るマネージャーの姿を止める部員たちの声。


「おいっ苗字っそっちじゃねぇから。」

「えっ?!」

「だからっそっちじゃねぇから!」


廊下の端から端へ向かって叫ぶ夜久の声を背に受けた名前は振り返って大きな声で聞き返す。
二回目にはさすがに立ち止まった彼女は首を傾げる。


夏休みの校舎はとても静かで、かつ…


「おーまーえーらー…どこの部だぁ?」

「ひっ!!」


夏休みなんて関係なく学校へ来ている先生たちは、とても疲れたように見えるものである。

名前の立ち止まったところから、少し手前の方で扉からそろっと顔を出した先生。
その姿を見た瞬間、身を引いた名前を先生の視線が捕らえた。


「あ、苗字。」

「…先生老けたね。」


補習でもお世話になった担当の寺井先生だ。
先生は名前を見た後、夜久たち部員がいるそちらを見てふっと笑った。


「すっかりバレー部のマネージャーじゃねぇか。」


そう、黒尾にマネージャーを頼まれて悩んでいたところ助言をしてくれた先生だ。
補習から全く出会っていなかったので、マネージャーとして頑張っていることを伝えることができていなかった名前が笑顔を見せる。


「うん!なんとかっ頑張ってるよ!」

「黒尾とはうまくいったのか?」

「あっそうあの…つき…え?!」


顔を一瞬で真っ赤にして扉から離れる名前。
先生は首を傾げた。


「つき?…は?お前黒尾と…」

「わーわーっ!違う違う違うっ先生部屋入れてっ」


その頃名前を見送っていた部員たちは難しい顔をしていた。


「…アイツ監督んとこ行くまでに何分かかってんだ?」

「ただ呼びに行くだけなのにね。」


夜久と研磨が寺井と話している様子を見てこれはもう自分たちの中から監督のところへ行った方が早いだろという決断に至っていた。



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