A of Diamonds
これからもっと
◆ ◇ ◆
固まる黒尾。
その顔を見て、してやったりの名前。
しかし目の前の彼の表情は黒いものへと変わる。
「嫌。」
「え…っ」
さらっと、振られた?
やっぱり嘘ついて…?
「違うぞ。そういう意味じゃねぇ。」
「じゃあどういう意味ですか?」
名前が無言になったことで別の意味で受け取られたと察した黒尾が否定する。
どことなく不安気な彼女の表情を見て頭を掻く。
「いや…まさか名前から言われると思ってなくて…」
「“だから?”って促したのは先輩です。」
「いや、そうですけど…違うんです。」
何が言いたいのかわからない名前に黒尾が言った。
「…俺が言いたいんだよ。」
思わず、口元へ手を持っていく名前。
やばい…素直に嬉しい。
「へへ…」
素直に嬉しそうに笑った名前に、黒尾は少し恥ずかしくなった。
「まだ付き合ってもねぇのにもう幸せそうだな。」
「もっと幸せにできるのは先輩の言葉次第です。」
「言うねぇ…」
言葉待ちの名前は未だかつて見たことがないほどニコニコしており、つい意地悪したくなってしまう。
でも、素直に待っている彼女を裏切ることができるほど嫌な奴ではない。
「名前。」
距離を開けた間を、埋める。
「俺と付き合って。」
出逢ってから、数えられるほどの日数しか経ってないけど、好きになってしまった。
「はい。」
まだこれから、もっと、好きになる。
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