A of Diamonds
先輩
◆ ◇ ◆
「ちょっとちょっと!音駒のマネちゃん!」
夕食中、木兎の傍を通った名前が声をかけられ立ち止まる。
「はい。木兎先輩。」
「せん?!」
「?」
なぜか名前に呼ばれただけだというのに固まってしまった木兎。
周りで「あーぁ…」と思う梟谷のメンバー。
「面倒なことになったぞ」と小さく言ったメンバーの言葉を聞き赤葦がため息をつく。
「木兎さん。他校のマネージャーで、しかも年下となれば先輩呼びは普通かと。」
「お…俺は嬉しい!!」
「「…。」」
あーぁ、面倒なことになった。と梟谷のメンバーは項垂れる。
名前は訳が分からず「えっと…何が?」と戸惑いの色を見せる。
「彼女は年上なら先輩と呼ぶんです。」
「じゃあなんで赤葦は俺の事“先輩”って呼んでくれないんだ?」
「“さん”付けが慣わしじゃないですか。」
「そんなもの俺は作った覚えはない!」と言えば、もう何も言えない。
「音駒のマネちゃん!もう一回呼んでくれ!」
「え…」
ガシッと名前の手を掴んだ木兎。
その木兎の腕を掴んだ人がいた。
「はい、そういうのはご遠慮くださーい。」
「あっ出たなっ黒尾っ!」
ニコッとしたが心から笑っていない笑顔だとすぐわかった。
「うち(音駒)のマネージャーじゃなくてもよかろう。」
「え〜だって先輩呼びされんならやっぱり可愛い子がいいじゃねぇの!」
「音駒のマネージャー可愛いし、なぁ?」と黒尾に同意を促す木兎。
赤葦は「俺はもう知らないぞ。」と隣で知らん振りをして食事を続ける。
「お前明日覚えてろよ…」
「おぉっなんだぁ?うちに勝つ気かぁ?」
「木兎さん。いい加減にしてください。」
黒尾に歯向かう木兎。
明らかに木兎が吹っかけたので赤葦もやめてくれと止めに入る。
何も言われぬまま音駒のテーブルに戻った矢先…
「お前は…」
夜久先輩は怒っていた。
「勝手に勝負吹っかけてくんな!」
「あれーやっくん勝つ気ないのかな?」
「ふざけんなお前…」
こ…怖。
夜の肝試しよりよっぽど怖い…とその場を逃げ出す名前。
そのシャツをぎゅっと握りしめた人がいた。
「名前さん!お水ありますか?」
「あ、あぁ…うん。」
リエーフに言われ、ハッとする。
そうだ、自分のする仕事をしなければ。
[ 38 / 82 ]
prev | list | next
しおりを挟む