A of Diamonds
タイミング悪い
◆ ◇ ◆
“先輩、好きです。”
間違いなく、名前の口から出た言葉。
「…何て…?」
「黒尾先輩ー!そこいますかっ?」
階段の下から山本の声がした。
身を離し階段の下を見に行く名前。
「あれ?苗字さん。黒尾先輩見なかったっすか?」
「いるよ。ここに。」
「名前、お前…」
黒尾にニコッと笑みを向ければ山本に「じゃあ黒尾先輩は頼んだ。」と言って階段を降りていく。
山本は不思議そうに彼女を見送った後黒尾に「何かあったんすか?」と聞いたが黒尾が「タイミング悪すぎだろ…。」と呟いた。
翌日、合宿2日目を迎えた。
昨夜のことはどこへやら、名前はバタバタと忙しそうにしていて声をかけるタイミングを見計らっている黒尾。
その姿を見て研磨が「クロ今日そわそわしてる。」と呟く。
「次は何する気なの?」
「なんで何かする前提なんだよ。」
研磨がボトルを置くとその横からリエーフが「研磨さん研磨さん!!」と声をかける。
「研磨さんが好きなタイプってこの中で誰ですか?」
「…え。」
この中とは体育館全体。
リエーフには男女の間はないのだろうかとさえ思う
「おれ、男に興味ないけど。」
「じゃあ女子の中で!」
「女子にも…」
「答えてください!!」
「…。」
面倒くさいなとリエーフを見る研磨。
「じゃあ名前で。」
「え。」
「は?」
リエーフと黒尾が研磨を同時に見た。
研磨は「うちのマネージャーだし。」と付け加えればリエーフは「あーそういうことっすか!」と納得する。
「ちなみに黒尾さんは?」
「ついでに聞くんじゃねぇ。」
ついでに聞かれて答えられた方は嬉しくねぇだろ。
「俺は本気だからそれには答えられねぇんだわ。」
「?どういう意味っすか?」
目をパチッとさせて黒尾に小首を傾げたリエーフに口角を上げて見せた。
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