Jack of Hearts
女子トーク
◆ ◇ ◆
合宿1日目を無事終えた部員たち。
黒尾がきょろきょろと辺りを見渡している姿を見て夜久が「どうした?」と問いかけた。
「うちのマネージャーはどこだ?」
「え?あそこにいんじゃねぇの?」
夜久が言ったところとは、他校のマネージャーが集まっているところ。
しかし「そこにはいなかった」と黒尾は言う。
「もう確認済みかよ…よっぽどの急用なんだな。」
苦笑いをする夜久に「見つけたら俺が探してたって言ってくれ。」とだけ言い、その場を去っていった黒尾。
夜久がドリンクを飲もうかと壁際へ寄った時、すぐ近くの扉から姿を現した名前の姿。
「あっ苗字じゃん。」
「!!は、はいっ何かご用ですか?」
肩の力を抜いていた名前が夜久の声に力を入れシャキッとする。
夜久が言い難そうに「ついさっき黒尾が探してたけど…」と告げれば、名前が「…夜久先輩…少しお話聞いてもらえないですか?」と夜久の腕を掴んだ。
ご飯の支度を手伝っていた名前たちマネージャー。
そこでご褒美にしていた女子トークが繰り広げられた。
もちろん、名前の話題。
「名前ちゃんは好きな人いるの?」
森然高校のマネージャー大滝がニコニコと問いかける。
まだ何も知らない彼女は素直に問いかけたのだが、もうすでに他のマネージャーたちは知っている。
「そう言えばその話してたんだ〜」と宮ノ下が言う。
「本当のところどうなのー?」と梟谷の白福が名前の顔を覗き込めば、彼女は視線をあちらこちらへ移動させる。
「あの…」
「んー?」
とても顔を近づけられている白福に視線を向けた名前。
「好きじゃなきゃ、抱きしめたいって思いませんよね?」
「「…。」」
その質問に、恋バナに興味津々のマネージャーたちは頬を赤くして嬉しそうにする。
「そうだね!好きでもない人のこと抱きしめたいなんて思わないね!」
「いいねー。可愛い。」
「恋してるねー。」
宮ノ下、白福、大滝が名前にそう言う。
谷地と清水は黙って聞いている。
雀田が「黒尾とはイイ感じなの?」と興味津々だ。
名前は「えっと…」と正直どこまで話せばいいのか悩んだ。
付き合ってないとはいえ、してはいけないことをすでにしてしまっている。
い、言えない。
どうしようかと思っているところに、他校の部員がマネージャーを呼びに来た。
そこで話は終わり、なんとか逃れた名前だったが、体育館へ戻ると黒尾の姿を見て反射的に踵を返した。
そして、今に至る。
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