Joker Lover | ナノ
Jack of Hearts
気づいたこと

◆ ◇ ◆


到着した部員達から体育館へ集まる。
名前は先ほど梟谷のマネージャーたちに粗方聞いた話を思い出していた。


梟谷学園グループの4校は毎年合同合宿を行っている。今年は宮城県の烏野高校も合宿に参加している。と…。
その烏野高校のマネージャーに3年生と1年生がいる。


「あっ…すみません…」


その声と共に名前の足元に転がってきたボール。
手渡した相手に、あ。と思わず声を漏らした。


「音駒のマネージャーの…」

「はじめまして。」


軽く会釈をする名前の手からボールを受け取る赤葦。


「何年?」

「2年…」

「同じ。」


微笑んだ赤葦から視線を落とした名前。

先ほど山本に聞いたため知っていた。
しかし、相手はこちらのことなど何も知らない。
そう、音駒のマネージャーということぐらいだ。


「…苗字さんだったよね。」

「はい…。」


凄い、黒尾先輩が1度言った名前を覚えててくれた。


目を輝かせて赤葦を見る名前に、彼は「さっきはゴメンね。うちの先輩が。」と苦笑いをする。

いえいえっと首を横に振る名前。


「私は別に…黒尾先輩の方が疲れてた感じでしたし…」


ふと、思い出したことがあった。

そう言えば…黒尾先輩と普通に話してたな。


出発するまで気まずい雰囲気だったが、到着した時には普通に黒尾と話をしていたことを思い出す。


…黒尾先輩、実は私が寝れなかった理由に気づいてたり…?


行動は、無意識に出るもので…当たりを見回す。


「黒尾さんならさっき部屋の前で見たよ。」


赤葦を見るなり、目を見開く。
なんで、わかったんだろう?と。


「あ、ありがとう!」


お礼を言う彼女に小さく微笑むことだけをして、見送る。


やっぱりイケメン。


音駒の部員たちが寝泊まりする教室の前、中から人の声はしない。
扉の小窓から中を除けば誰もいない様子を見せる。


あれ…入れ違い?


そう思った直後、「何してんの、お前。」と頭上から黒尾の声がした。


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