Joker Lover | ナノ
3 of Spades
夏休み

◆ ◇ ◆


夏休みに入ったばかりだというのに、私は、なぜ制服で走っているのだろうか。

その答えは、一週間前の自分に聞くと良いよ。

東京都内某所にある、都立音駒高等学校に通う彼女。
セミの鳴き声が聞こえる真夏に走って学校へ向かっていた。


一週間前に行われた期末テスト。
一つでも赤点があれば補習。


いつも、試験前に勉強しなくても赤点は免れることが出来ていた。
だから今回も、その調子で挑んだ。

忘れていた。
苦手な範囲の科目があったことを…。
そして、苦手な範囲がガッツリ出たテストではもちろん解くこと出来ず、高校入って以来初の赤点を取ってしまった。


今日がその補習だというのに、よりにも寄って寝坊をしてしまった。

野球部が部活を始めている声が聞こえてくる門を通り下足ロッカーで靴を履き替えた時、目の前を通ったどこかの部活のマネージャーがどこかから落とした紙。

何度も折り返されていて、中を見ることは出来ないが落とした人はまだ追いかければ間に合う。


補習より先に彼女の元へ向かった。
ついた先は、体育館。
バレー部が練習をしているようだ。
ウチのバレー部って、強いんだよね。と少し覗き見たその先には、知らない人が沢山いた。


ウチのバレー部は…と視線を移せば、手前のコートで試合をしていた。


夜久先輩だ。


リベロの夜久の姿を見て名前が思い出すのは友人やクラスメイトが騒いでる時のこと。


先輩モテるからな…と見ていれば、奥のコートで先ほど目の前を通りかかった女の子がいた。


遠い…。


帰宅時間のお昼休みにもう一度来てみよう。と思った名前はそれを手に教室へ向かった。


化学と生物は2年1組で行われている。
既に始まっているであろう教室の扉に手をかけた。


[ 1 / 82 ]
prev | list | next

しおりを挟む