Joker Lover | ナノ
8 of Clubs
到着

◆ ◇ ◆


森然高校に着いた、と黒尾に起こされた名前は欠伸をしながら黒尾の背を付いていく。
他の部員たちは先に体育館へ向かったと聞いて起こすのを最後にしてくれたんだと思えば、少し、申し訳ないと思っているのかもしれないなと思った名前。

でも、あんなことを言われて意識しないわけもない。

二人っきりの時間というものは、部員達の中では黒尾とが一番多く慣れていると思っていたのに、全く慣れていないことに気付かされる。


変に意識をし過ぎて、ドキドキする。


「あー…面倒くさいことになった。」


黒尾は立ち止まるなり、腰に手を当てる。
その背に同じように立ち止まれば、目の前から「おーい!黒尾ー!」と駆け寄ってくる人の姿があった。


「俺に会いたかっただろー!」

「いや、会いたくなかった。」

「嘘つくな!」


「お前はホント嘘ばっかだな!」と盛大に笑う。
名前は黒尾の背後から、なんだこの人…と思いつつこっそり見ていれば、笑うその人の背後からやって来た男の人に目を見開いた。


「木兎さん。お願いですから荷物置いてからにしてください。」

「いーじゃねぇかぁ!!」


笑う木兎にため息をつく赤葦は黒尾に軽く会釈をして、すみませんと代わりに謝る。

黒尾に一歩近づいた名前。
その音に、いち早く気づいたのは木兎だ。


「?!黒尾の背後に何かいるぞ!」

「は?」


黒尾が少し振り返れば、名前と目が合う。


「あー、そか…うちのマネージャーになった苗字だ。」

「おぉ!念願のマネージャーか!何ちゃん?」


詰め寄る木兎から名前を庇うように黒尾が身を動かした。
黒尾の背に隠れてしまった名前はその背を見上げて少し俯く。


「なんだよー仲良くしてもいーじゃねぇの〜。」

「ダメだ。」


その言葉で、場が一瞬で張り詰めた空気になった。
木兎はニヤニヤしながら「まさかお前…」と言う。
赤葦は「木兎さん、早く荷物置きに…」と手を伸ばした時、ビシッと黒尾を指さした。


「付き合ってるな?!」

「……はぁ。」


盛大なため息をついたのは、赤葦だった。


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