8 of Clubs
初めて
◆ ◇ ◆
「じゃあ苗字はやっとお前の気持ちをハッキリ、聞いて寝不足は恐らくそれによるものだって事か。」
合宿のある森然高校に着くまでの間、黒尾の話を聞く夜久と海。
「そう。」
「苗字は、お前のこと好きなの?」
夜久からの問いかけに、微妙な顔をする黒尾。
「好きとはまだ言われてねぇんだよなぁ。」
「一目惚れだってことは話したのか?」
「いや、まだ…一目惚れってさ、苗字の表面上に惹かれたってことだろ?それって、本人にしてみれば、あまり嬉しくないんじゃねぇかな…」
と思うんですよね、俺は。と黒尾は言ったが、夜久はなんとも言えない表情をしている。
「何か?」
「経験者は語る、だな。」
「なんだと?」
これだからモテる男は、と嫌味っぽく言い捨てる夜久。
「あ、そういえば、この間の告白どーしたんだよ。」
「この間?」
「恍けるなよ…ほら、4組の。結構可愛い子だったじゃん。」
「あー…」
「まさかお前…手出してねぇだろうな。」
「誰にでも手が出せるヤツに見えますか?」と夜久に問いかけた黒尾。
夜久も海も頷く。
「もうココ最近そうにしか見えなくて困ってる。」
「同じく。」
「やめろ。苗字に聞こえたらどーすんだよ。」
「本当に苗字が初めてなのか?」と海が聞けば、黒尾は「そうだよ。」とだけ答えた。
その頃、名前は研磨の隣でスヤスヤと眠っていた。
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