8 of Clubs
ハッキリと
◆ ◇ ◆
黒尾から深い溜め息が聞こえてきた。
「名前。俺、この前言ったよな。」
真剣な声色に、思わず身に力が入る。
「好きでもない相手にキスしたり、好きだって言わねぇって。」
言われた時の事を思い返す。
あの時に、正直に先輩が気になると言った。
「もっと俺をちゃんと見ろ。」
その言葉を聞いて、思わず顔を上げた。
無意識に近い…黒尾の言葉にひかれるように。
「それから、ちゃんと答えを出せ。」
黒尾先輩は、いつも気にかけてくれる。
ちゃんと、見てくれる。
主将だから…。
一番初めに迷惑をかけた先輩だから…。
そうじゃ、ないなら?
翌朝、早朝に家を出た名前。
黒尾の言葉を聞いた翌日、いつも通り部活があって良かったと思った。
合宿になれば、言葉を交わす時間も、見る時間も減る。
1日、いつも通り過ごせたことで名前の心は軽くなっていた。
前日に言われていたら…寝られなかっただろうな。
「うわっ、苗字おまえ…」
「…寝てねぇだろ。」
集合場所に着くなり、夜久に苦笑いを、黒尾に呆れた顔向けられる。
キッと鋭い視線を黒尾に向ける名前。
「…なに。」
「…いえ。」
誰のせいで寝れなかったと…。
1日明けたところで、状況は何も変わらないのだと名前は知った。
頭を掻く黒尾に夜久が横目に「お前何したんだよ。」と問いかける。
「何も…」
「嘘つくなよ。きのうからおかしーだろお前ら。」
鋭い夜久からの問いかけに黒尾は「一昨日な…」と名前に伝えたことをすべて話した。
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