8 of Clubs
聞く
◆ ◇ ◆
「いよいよ明後日かぁ…」
「合宿楽しみっすね!」
黒尾からの連絡を聞いた部員たちは合宿の話で持ちきりだ。
黒尾は、あと今日入れて二日…どうしたもんか。と名前との時間のことを考えていた。
「また名前の事考えてる。」
「なんでバレてる…ってか、呼び捨て?まさか名前も…?」
「まさかって…俺みんなに呼ばれてるし…名前に呼ばれる時だけ違和感あるから…」
呼び捨てにした。と黒尾の隣で研磨がジャージを脱ぐ。
「クロは、どうしたいの?」
とりあえず今の状況は良くないんだよな、と着替えながら話す。
「今の状況って?」
「…。」
付き合ってもないのに触れてるなんて言えない…。
「クロは、好きなんでしょ?」
「おー。」
「何が不安で言わないの?」
「いや、言ったけど…冗談だと思われるんだよなぁ…」
なんで?と研磨に問いかければ、彼は「顔が騙しそうな顔だから。」と平然と言ってのけた。
「…おい、それいつまで経っても伝わらない気がするんだけど…」
「その時になれば、伝わるよ。たぶん。」
適当なことを…と思いながらも、この時、すっかり黒尾の中の悩みが軽くなっていた。
「名前。」
「はい?」
合宿までもう少し。
名前のバレー知識も大分ついてきた。
真剣にメモを取る彼女の名前をそっと呼んだ黒尾。
視線はメモへ向けたままの名前に黒尾はそのまま話す。
「この前、お礼にお前の時間くれって言っただろ?」
「…はい。」
その話に、顔を上げた名前は困ったような表情をしている。
「アレ、俺考えたんだけど…名前と二人でいれる時間が欲しい。」
「…へ…え…?」
身をゆっくり起こし、手からペンが落ちる。
黒尾からの直球な言葉に、その手を振った。
「む、無理ですっ」
「なんで。」
「なんでって…」
視線を、落とす名前。
ぎゅっと、意を決したように目を瞑る。
「先輩、好きな人いるんですよね?」
シーンと静まり返るその場に、名前はゆっくり目を開けると視線は落としたまま。
黒尾の表情は見えない。
怖い気持ちはもちろんある。
でも、このままズルズルこの状況を保ったままでは、いけない。
「先輩、一途だって言ってたじゃないですか…私と時間作ってどうするつもりなんですか?」
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