Joker Lover | ナノ
5 of Diamonds
休みなし、後悔なし

◆ ◇ ◆


教室を出るなり、先生の言葉を思い出す。


「…強豪、休み無し、後悔なし…」


休みが無いのに、後悔がないって…


「どんな部活…。」


まだ眠い名前は、欠伸をしながら階段を降りてトボトボと体育館へ向かう。


…そういえば、あの女の子もマネージャーなのかな。
他校なんだろうけど…また会えるかな。


なんてことを考えながら、次第に歩くスピードは落ちていく。


…行きたくない…。


期間限定マネージャーなら、もっと足が軽かったんだろう。
正真正銘のマネージャーになるとなれば、この変な時期に…不信感を抱かれるに決まっている。

そんな思いが、名前の足を重くする。


「名前。」

「っ…」


背後、それはすぐ後ろ。
頭上から聞こえてきた、よく知る声。


「お前何やってんだ?こんなとこで突っ立って…」


不思議そうに名前の様子を伺い見つめる黒尾。
名前は、ギュッと掌を握る。


「…いつもの威勢はどうした?落としてきたのか。」

「…。」


俯く名前の視界に、黒尾の足が入り込む。
ポンと、乗せられる手。
頭上に重みを感じる。


「俺がいんだろ。」

「…。」

「…部活中に限るがな。」


ふっと柔らかい笑みを浮かべる黒尾。
それに対して名前は、相変わらず俯いたまま。


「…何かあったら、先輩のせいですからね。」

「…何かって?」

「…わかりませんけど…」


相変わらず動こうとしない彼女の腕を掴んだ黒尾。


「入部して何かあった時、それは俺のせいだ。」


顔を上げた名前を見て「やっと顔上げたな。」と言う。
その顔がどこか嬉しそうに、名前の目には映った。


「…先輩、私…バレーのルールがイマイチ…」

「…は?何て言った?」


黒尾の苦労は、これからが本番を迎える。


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