5 of Diamonds
何かの縁
◆ ◇ ◆
ズルイと思った。
こういう時だけ、真剣な顔して…その言葉に何の意味もないんでしょ?
「なんで…私なんですか。」
名前の問いかけに、黒尾は彼女の顔から両手をゆっくり離した。
「可愛いからに決まってんだろ。」
…また、この人は…。
私を何度拍子抜けさせれば気が済むんだろうか…。
「もっと可愛い人がいるので、私はこれで…」
「嘘っ…いや、一理ある!あるけど…」
「…けど?」
この時、名前は内心、嬉しさを感じていた。
本当に、黒尾は自分をマネージャーにしたいと考えてるんだと必死さから伝わってきたからだ。
頭を掻く黒尾の姿を見て、少し期待する。
「…この時期に会えたのも何かの縁だろ。」
そう言われて、思い出すことが一つ。
「…黒尾先輩のキスフレになるためでは無くてですか?」
「…名前。俺、正直言ってお前を抱きたいと思ってる。」
「…やっぱりきのうあわよくばなんて思ってたんじゃ…」
「いや、俺は一途だ。好きなヤツにしかしねぇぞ。」
どの口が言うんだ、と思わず溜息が零れる。
すべて冗談で言ってることも分かっている。
そこまでしてマネージャーを探しているなら、仕方ない。
「わかりました。マネージャー、します。」
思い出しただけで、溜め息が出てしまう。
黒尾の誘いといい…容易に引き受けて務まるものではないのだから。
靴を履き替え、校舎に入った時、体育館を見た。
とりあえず合宿は今日までだから、明日から部活来い。
「はぁあ…」
重い足を動かしながら、最後の補習へ向かった。
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