Love Game[完結] | ナノ

Love Game


これは神様が作ったゲームだ。


黒尾先輩の行動も、結兄の行動も、研磨の行動も、すべて神様が仕組んだもの。
それが一つに重なって、今がある。


「神様って偉大…」

「……何言ってんだ。」


結兄があの時試合に連れて行ってくれなかったら、私は音駒には入学してない。
あの時がなければ、夜久先輩とも黒尾先輩とも恋してない。
バレー部のマネージャーだってしようと思っていない。
研磨にも会ってない。
人生に確実に刻み込まれた物事が、たった1日の出来事によって大きく異なる。



「結兄…」

「ん?」


ソファーで寝転がっている兄を見る。
似てない兄の顔を見つめてから、「カッコいいお兄ちゃんをもって、よかった。」と言うと兄は目を見開いた。


「…夜久先輩に電話しないと…」

「はっ…なに?何いまの?誰?」


慌てて身を起こした結葵が一人あたふたと辺りを見渡す。
そんな彼のいたリビングを後にして、自室へ向かう。


電話を手に取るとメッセージが来ていた。
何のためらいもなく、電話を掛ける。


『時穏?』

「先輩?」

『先輩ですけども…』


呆れた声色でそう返した夜久に笑う時穏。


「明日来ます?家。」

『明日いんの?お母さん。』

「いますよ。おまけで結兄も。」

『おまけ…いるか?』


その言葉に思わず笑みが零れる。


「先輩に話したいこといっぱいあるんです!」

『お〜何?』

「研磨のことで!」

『研磨かよ…まぁなんでもいいけどさ…』


残念そうな声色をしている。

ふふっと笑う時穏に夜久が「俺も時穏に話しておきたいことがあるんだよな。」と言う。


きょとんとする時穏。


『黒尾のことで。』

「っ…それ前話したら夜久先輩怒ったじゃないですか!」

『怒ったんじゃねぇし!』

「怒りました!ヤキモチだって立派な怒りですよ!」

『黒尾のことカッコいいとか言うからだろ!』

「そんなの先輩の方が何倍もカッコいいって思ってるに決まってるじゃないですか!!」


言って、口を押える。
時すでに遅し。


『…あした、楽しみにしてるわ。』


それだけ言って電話を切られてしまった。


腕の力を抜いて、固まる。


「や…やばい感じがする。」


そうだ。
この前だって、黒尾先輩の話をしたとき…


「へぇ〜…誰がカッコいいって?」

「や、夜久先輩?」


実はドSだったとか?!
身を詰める夜久から目を背ける。


「俺は怒ってんだよ…」


そう言って先輩は…私の唇を…。



「や…また唇奪われる!!」

「…何言ってんの。アンタ。」



扉で立つ、母の姿。



「…消えたい。」



-END-


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