Love Game[完結] | ナノ

兄の優しさ


扉を覗き込む結葵。


「…まぁ、そうなるわな。」


座り込み、僅かに肩を揺らす彼女の姿に結葵はため息をついた。

しゃがみ込み、その頭を撫でる。


「時穏の頭撫でんの久しぶりだな…」

「…気持ちわりぃなぁ…」

「今に始まったことじゃねぇんだよ!」


夜久の言葉に開き直るを覚えたらしい結葵は、彼女の頭を撫でながら何も聞こうとはしない。

兄の優しさが見れる。


「…なんか、悔しいな。」


泣いている彼女の姿、そんな彼女の頭を撫でる兄の姿を見つめながら夜久は呟く。
それを聞いた結葵は「でもさ。」と夜久を見上げる。


「…やっくんに惚れたことには間違いないよな?時穏。」


伺いをかけた結葵は、時穏の頭から手を離した。
顔を僅かに上げた時穏が「結兄のあほ。」と涙声ながらに呟く。


ニッと笑う兄の姿を見る時穏。


「じゃあ優しいお兄ちゃんは黒尾に話にいくとして…彼氏に譲渡するわ。」


「後は頼んだぞ、夜久。」と階段を下りていく。


その背を見つめながら時穏は「…悔しいけど、カッコいい。」と小さく呟く。
聞いた夜久は「それ聞いたらすげぇ喜んだだろうな。アイツ。」と笑った。


座り込む時穏は制服の裾で涙を拭う。
その隣にしゃがみ込んだ夜久を見た時穏。


右腕を彼女の後頭部へ回すと、そのまま肩口に彼女の顔を引き寄せた。
ゆっくり、髪を撫でる。


顔を埋める彼女は「…また、泣きそうです…」と呟く。


「…黒尾にどんな顔して会えば…って?」

「それも思いますけど…」


ギュッと夜久の背に両腕を回した時穏に驚く。


「黒尾先輩には…」

「それは言うな。」

「う…」


悪いと思ってる。それは言わない。


「…黒尾に抱き着いてやれば?」

「…え?」


時穏は夜久を見上げた。


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