Love Game[完結] | ナノ

ごめんなさい


駅につき、時穏と別れる夜久が「あしたな。」と笑顔を見せる。

その姿に思わず手を伸ばした彼女。
ギュッと夜久のセーターの袖を握りしめる。

それを見た夜久は不思議そうに時穏を見つめて考える。


「…帰りたくない、とか?」

「…。」


僅かに彼女の握る手の力が緩む。


「…きょうは、ごめんなさい。」

「……え?何のこと?」


全く予想外の言葉を言われ、眉間に皺を寄せる夜久。


「黒尾先輩には明日謝ります。そのことですよね?二人で話してたの。」


真っすぐ夜久を見る時穏の顔は真剣そのもの。
笑うこともできず、かといって本当のことを言えるわけもない。


黒尾の真実は、今のところ誰が知っているのかもまだわかっていない。


「…時穏が言ってんのは…部活が始まる前の…だよな?」

「はい。」


そんなこと、全然いい。
謝れるほどのことではない。

実際の話された内容にしたら比べ物にならない。

時穏には…“モテてすみません”って冗談でも謝られたい。

何で好きになったんだろう。
好かれるってことはそれだけ魅力あるからなんだろうけど…。


何で…こんなに考えることいっぱいあるんだろう…
目の前のたった一人の好きな人のために。


「…先輩?」

「あー…悪い。とりあえず、それは俺らも気にしてないから。気にしなくていい。」

「…?」


とりあえず、聞きたいヤツがいる。


駅で別れたその後、夜久は結葵にメッセージを一通入れた。


“聞きたいことがある。”


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