想い
夜久の言葉を聞いて嬉しくなった。
音駒に行こうと思ったのは紛れもなく彼のおかげだからだ。
「あと、榎本にすげぇ時穏のこと聞いた。あれからアイツもよく時穏のこと話すようになって…そこで榎本がシスコンってことがわかったんだぜ…。」
夜久は苦笑いしながら話すが、聞いていた時穏も同様に苦笑いするしかなかった。
「榎本もシスコンだけあって時穏のこと好きだからか知らねぇけど、話聞いてるだけで可愛いな、って思うとこがあったりしたよ。」
「…。」
黙って聞いてる時穏に目を向けた夜久。
「しかも、音駒に来た榎本の妹はなぜかバレー部のマネージャーなりたいって来たし…あれはびっくりした。」
「マネージャーは…」
「試合見た時に思ったんだろ?音駒に来てバレー部のマネージャーしたい。って。」
何で知ってるんだろう?と首を傾げた時穏を見て、「それも榎本から聞いた。」と小さく笑う夜久。
「時穏がバレー部入った時は覚えてる…というより、多分殆ど覚えてるけどな…。」
夜久が想い続けてくれていた時間、時穏は黒尾が好きだった。
「二年あるし…しかもバレー部のマネージャーしてくれるって言うんだから…頑張るしかないって思った。」
「時穏が黒尾好きなのは知ってたけど…それでも諦められなかったんだよ…」と笑う夜久に時穏は想われてた自分に気づく。
「じゃあ、先輩が1年の時から好きな人って、私ですか?」
「そうだよ…俺高校入ってから時穏しか見てねぇから…だから言っただろ?ずっと好きだったって。」
照れながらもちゃんと話してくれる夜久に、時穏は俯いた。
[ 72 / 80 ]
prev | list | next
しおりを挟む