Love Game[完結] | ナノ

落ちた瞬間


着替えを終えた時穏。
外に出れば、すでに着替えを終えていた夜久の姿があった。


カッコイイ…。


立っているだけでカッコよく見える夜久を見て、俯く時穏。
思い出されるのは、『夜久先輩と付き合えた時には私、全てを捧げる!』と言った彼女の言葉。


「何考えてんの?」

「…先輩のことです。」


目の前から声がした。
それと同時に、頭の上に軽い重みを感じる。

思わず、涙が出そうになる。


「夜久先輩…」

「ん?」

「…好き。」


不意打ちの告白に顔をほんのり紅くする夜久。


「不意打ちやめろ。」

「…へへ。」


堪らず抱きしめたくなる気持ちを抑え、「帰ろーぜ。」と先を歩き出す夜久の背を、時穏も追った。


「…話って…何ですか?」


帰路につく二人。
外は真っ暗で、街灯だけが二人を照らす。


「時穏のこと、いつから好きなのか話しとこうと思って。」

「…。」


不安要素である話に、胸が嫌な音を立てる。

もし、他に好きな人がいると思うと…つらくなってしまう。


ギュッと手に力を入れる時穏。
夜久は話し始めた。


「時穏と初めてあった日、試合のとき覚えてる?」

「はい…」


時穏は、あの試合があったから、私は今音駒にいるようなものだったと言っても過言ではないと思う。


「あの時さ、試合終わったあと…時穏と榎本が俺のところに来ただろ。」

「行きました。凄い怖かったんですよ…あの時…ジャージが真っ赤なので。」


ふっと笑う夜久。


「その時さ、時穏俺になんて言ったか覚えてる?」


どーせ覚えてないのだろう、と夜久は思っていた。
しかし、時穏は「はい。」と頷く。


「すごく、かっこよかったです。」


「ですよね。」と笑う時穏に、夜久は少し驚いた。
覚えてるのは自分だけだと思い込んででいたかだ。


「そう。それ、俺が時穏に落ちた瞬間。」


「でもそれだけじゃねぇから。その一言言われたくらいで時穏のこと好きになるなら、簡単なヤツだろ?」と笑う。

時穏は「そうですね…」と視線を落とした。


「だから、榎本に時穏が音駒受けるって聞いた時は嬉しかった。少なからず同じ学校だと会えるだろ?」


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