Love Game[完結] | ナノ

黒尾先輩


「なんで時穏は俺に抱き着いてくれねぇんだろ。」

「…あんまいいもんじゃねぇぞ?」


準備をしているマネージャーの姿を見て、話す3年二人。

黒尾が夜久を見てジロッと視線を送る。
「なんだよ。」と嫌な顔をする夜久。


「お前はいーじゃねぇか。毎日抱き着かれて…」

「…?黒尾?」


黒尾の様子が変わったことを不思議に思った夜久が彼に何か声をかけようとした時だ。


「俺も“黒尾先輩っ”って抱き着かれてぇ。」

「おい、お前ソレただの妄想だろ。」


ハァとため息をついた夜久は黒尾から身を離した。
黒尾は相変わらずせっせと準備をこなしているマネージャーの姿を見て先ほどのことを思い出していた。


…夜久みてぇな関係になるにはどうすりゃいーんだ?


自分には真っ赤な顔をして誰がどう見ても仲が良いようには見えない。
しかし、夜久と彼女が話している姿はそれはもう仲が良いように見える。


「…榎本と夜久より早く出会ってればよかったのか。」


なんて過去に悔しい思いをしながら準備へ向かった黒尾だった。




3年5組。
朝練を終えた夜久と黒尾が教室に入る。
二人の姿を見た結葵が手を挙げて待っていましたと言わんばかり主張していた。



「あれ?なんか黒尾元気なくね?」

「んなことねぇよ。」

「時穏に抱き着かれるにはどうすればいいのか、って考えてんだよな?」

「なにっ?!」


席に着いた黒尾を横目に夜久がニヤニヤしながら結葵に言う。
聞いた彼は立ち上がり黒尾に「どういうことだ?」と問いかける。


「夜久には抱き着く仲なくせに、俺にはよそよそしいんだよ。それが気に食わねぇ。」

「あー…それな。」

「?なんだよ。」


結葵がストンと椅子に腰を下ろす姿を見て不思議そうに見つめる黒尾。


「アイツ、黒尾のことだけは特別だからな。」

「は?」

「お前今朝言ってたじゃねぇか。俺は恋愛対象に入らねぇけど、自分は入るってことかって。」


結葵の言葉に夜久が便乗する。
黒尾は二人の言葉を聞いて「まさかぁ」と苦笑いを浮かべたが、至って二人は真顔。


「は…まじ?」

「いや、確証はねぇよ?俺も夜久の話ばっか聞くしな。お前の話は全く出てこねぇ。」

「上げて下げるのやめてくれませんか。」


期待した自分がバカだったと黒尾はため息をつく。
そんな彼の隣でニヤニヤしている二人がいた。

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